壁ドン教育? 山田詠美さんは「大丈夫か日本」と笑いつつ怒る

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ズバリの政策を

   研究会での提案には、「日本では結婚が出生の大前提。結婚に至る結びつきの88%が恋愛で、恋愛できる環境をリサーチするのは(少子化対策の)スタートライン」(野田聖子・少子化担当相)と理解を示す声もあったが、総じて評判は芳しくなかった。

   「国までが恋愛偏差値の向上に取り組むのはおかしい」「恋愛テクは知りたい人が雑誌やネットで覚えればいいことで、税金を使う話ではない」といった意見が代表的だ。

   「結婚を促し、少子化に歯止めをかけようとして、こんな馬鹿みたいなこと話し合っているんだったら、これも大きな間違い」と書く山田さん。怒りの一つ目の理由は、前述の通り論点のズレである。二つ目は、極めて私的な行為であり、それが許される前提がいくつもある壁ドンを、九九や逆上がりのように一般化して教え込もうという発想だろう。

   言わずもがなだが、壁ドンとは男性が女性を壁ぎわに追い込み、動きを封じて強引にセマること。2014年には流行語大賞にもランキングされたが、漫画の世界ならともかく、今では行為自体がセクハラにあたるという意見がもっぱらだ。

   掲載誌が巻頭に置く山田連載。タイトルにある「4」はメールなどでは「for」と同義で、コラムの基本コンセプトは〈特別な女性、人生のヒロインになるためのルール〉だという。今回のメッセージは明快だ。国難とも言われる少子化問題は、あくまで子育て支援など正攻法の政策で解決すべし。これに尽きる。

   読み終えて、筆者が政府を壁ドンしている図を思い浮かべた。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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