「制裁」に踏み切った国はわずか
さらに詳しい分析は、シンガポールの元駐米大使で、政治学者のチャン・ヘンチー氏が6月9日の日経新聞で語っていた。
ロシアのウクライナ侵攻に対する国連総会の非難決議には141か国が賛成したが、ロシアへの制裁に踏み切ったのは、欧米やその同盟国を除くと、わずかにすぎないことに着目。「アジアや中南米、アフリカの大半の国は制裁に同調していない。この状況がウクライナ侵攻後の世界の新たな秩序を表している」と、以下のように分析した。
・世界の大半の国は米国・欧州、中国・ロシアのいずれの陣営にも完全にくみしない「第3の空間」に属することを望んでいる。自国の国益を第一に考え、ある問題では米国の立場に賛同し、別の問題では中ロに近い立場を取ることを矛盾だと考えない。
・例えば日米豪と共に「Quad(クアッド)」の一員であるインドは中国に関して3か国と歩調を合わせるが、それ以外の問題では独自の立場を譲らない。実際、ロシアとの軍事面での協力関係の深さから、ウクライナ侵攻を非難せずに中立姿勢を保っている。
・東南アジア諸国連合(ASEAN)は民主主義、疑似民主主義、共産主義、社会主義、国軍による支配と多様な政治体制の集合体だ。民主主義は地域を導く旗印にはならない。