中華料理チェーン「大阪王将」のフランチャイズ店で、キッチンでナメクジが大量発生していると2022年7月終盤にツイッター上で告発があった。これが大きな騒動に発展し、連日インターネットニュースで報道が相次いだ。
ナメクジには寄生虫「広東住血線虫」が寄生している。人間に感染した場合には、命を落とす危険性がある。
ふざけて食べたばかりに
告発によると、ナメクジは生卵を割る鍋やザル、冷蔵庫にも発生していたという。保健所の立ち入り検査では、ナメクジは見つからなかったというが、ツイッター上では健康被害を心配する投稿が見られた。
過去にナメクジを食べて死亡した、海外の例を思い出した人も多いようだ。「ニューズウィーク日本版」が2018年11月6日付で報じている。「ナメクジを食べた男性、脳を侵す寄生虫で8年後に死亡」と題された記事だ。
オーストラリア在住の男性、サム・バラードは19歳だった2010年、自宅で行った友人たちとのパーティーで、ワインを飲んでいたところにはい出てきたナメクジをふざけて食べたのだという。バラードさんはその後、髄膜炎の一種である好酸球性髄膜脳炎を発症、1年以上にわたって昏睡状態が続き、その後意識を取り戻すも脳に損傷を受けた。結果、24時間の介護を要する重い後遺症が残ることになった。「広東住血線虫症」が原因だった。
この病気に起因するさまざまな合併症を患った末、18年11月2日に27歳で死亡した。
特効的な治療法ない
国立感染症研究所の「感染症発生動向調査週報 2004年第25号」によると、ナメクジに寄生する「広東住血線虫」は、人間に感染すると「好酸球性髄膜脳炎、あるいは好酸球性髄膜炎」を引き起こす。
2~35日の潜伏期の後に発熱、激しい頭痛、知覚異常等さまざまな症状を発症。「感染虫体数が多い重篤例では昏睡に陥ったり、死亡する場合もある」という。また、これらの症状は2~4週間続くが、自然に緩解・治癒し、通常予後は良い。ただし、まれに失明、知能遅延、てんかんといった後遺症が残るケースもある。特効的な治療法はなく、対症療法によって症状を緩和することが治療主体になる。
日本国内での発症について、2003年8月時点での人体症例は54例で、そのうちおよそ61%が沖縄県での感染。国内での死亡例は、00年に沖縄県で発生していると報告されている。
感染が多いとされている、沖縄県の衛生環境研究所微生物室では「これだけは知っておきたい 広東住血線虫 Q&A」を公開し、写真やイラスト付きでわかりやすく解説している。
感染経路は、アフリカマイマイやナメクジを生で食べる、あるいは素手で触れるほか、汚染された生野菜を食べて感染した例もあると説明。予防方法は、ナメクジなどを食べないのはもちろん、触れた場合や、誤って口に入れたり触れた手をなめた場合には流水とせっけんでよく洗うこと。また、「野菜や果物を生で食べる場合は流水で十分に洗うこと」といった注意喚起も行っている。