【作リエイターズアトリエ(通称「作リエ」)】
テレビアニメ「ポプテピピック」のゲームパートを描き、映像制作やイベント主催など、フリーランスでマルチに活躍する山下諒さん。隔週水曜夜、各分野で活躍中のゲストクリエイターや美大生を招いて、「創作」をテーマに、ツイッターの「スペース」や「オンラインセミナー」で語らう企画が「作リエ」だ。
連載では、スペースで出た話題から、エッセンスを抽出してお届けする。
未来のゲストは、今この記事を読んでいるあなたかも?
第2回のゲストは、山下さんと同じ東京造形大学出身の、しょーたさん。テーマは「【こどもアニメ】をつくる楽しさ・むずかしさ」だ。スペースアーカイブはこちらから。
知らないこどもが笑ってくれるように
しょーたさんは、映像制作プロダクションのディレクションズ(東京都渋谷区)で働きつつ、ヘンテコアニメーション作家として、ゆかいな「手描きアニメーション」をつくっている。代表作は、2019年アヌシー国際アニメーション映画祭で上映され、他映画祭でも受賞実績がある「がんばれ!よんぺーくん」(以下、よんぺーくん)。「超絶元気でハイテンションな男の子がおつかいを頼まれておでかけする」アニメで、一秒後の展開が読めない、奇想天外なストーリーだ。
同作はじめ、これまでに複数の「こども向け」作品を生み出してきた、しょーたさん。「自分を知らないこどもが、笑ってくれるか」を考えて制作するそうだ。
しょーたさん「いいなと思っているのが、大道芸人です。通りすがりの親子が足を止めて、芸を見て笑っているんですよね。その光景が素敵だなと」
山下さん「興味なく、ふらっとやってきた人も取り込める面白さってことですね」
ただ、人によって「笑いの評価」は変わる。こどもにとって何が面白いか、正解はなく、作品づくりはいつも難しい。しかし、「『難しい』と思っていることが大事」と、しょーたさん。「この要素さえ出せば、こどもは笑うだろう」と、考えるのをやめてしまうのは避けたいそうだ。
しょーたさん「面白いのと、つまらないのって、なんだろう。そうやって、ちゃんと悩みぬいて考えた『面白い』でないと、こどもだましになってしまうんですよ」
最後の質問。しょーたさんの「クリエイティブの柱」とは。
しょーたさん「『自分も楽しむ、周りも楽しむ』ですね。ひとりよがりにならず、僕自身も作っていて面白い......うまくバランスを取れるのが、こども向け作品を手掛けているときなんです」
作っていたのは「大人が思う、こども向け」かも
スペース終了後の二人に、話を振り返ってもらった。しょーたさんは、「『よんぺーくん』制作以前、壁にぶち当たっていた」と明かした際、山下さんに「こども向けと言いつつ、実は『大人が思う、こども向け』を作っていたのかもしれない」と指摘してもらえたのが大きかった、と語る。
しょーたさん「『こどもたちのために』という思いが、実は『自分(大人)のイメージするこどもたちだった』パターンは、恐らくこれからも、油断していたら陥る可能性がある」
だからこそ、やはり「まず自分自身が全力で楽しむ」を大事にし、そして「こどもだましはこどもに受けない」を、今後も考えながら活動していく必要があると感じたそうだ。これまでの活動や考えを、視聴者に向けて話すことで、「改めて、一歩引いた目線から自分を見つめ直すキッカケが出来た」。
山下さんは、「通りすがりのこどもが、つい見てしまうかどうかを判断基準に持つ」という、しょーたさんなりの答えにハッとさせられたと言い、
「『天才だな』と思う方でも、苦悩と努力と決断の繰り返しで最高の作品を創造しているのだと、改めて実感しました」
と総括した。
山下さん「今度は、こども向けコンテンツを作る人を集め、『こども向けとは何なのか!?』というテーマで語り明かしてもらいたいです(笑)」
しょーたさん「共通点がある人で集まって、1つのテーマからお話するというのは、実現したらぜひ参加したいです!今後、作リエのゲストになりたい人にも、自分自身を少し冷静に振り返る機会を頂けるはずなので、『オススメです!』と全力でお伝えしたい」
第3回作リエは、2022年8月3日実施予定。