オフィスの一部に、国産の無垢材家具を置き、「木の心地よさを感じられる場」を取り入れる。すると、「集中しやすくなる」「出社意欲が増す」など、ポジティブな変化は出るのか。
埼玉県の特産材「西川材」を使った製品企画を手がける、西川バウム(埼玉県飯能市)と、空間プロデュース業の乃村工藝社(東京都港区)協力のもと、東日本旅客鉄道(以下、JR東日本)新幹線統括本部「東京新幹線運輸区」の一角に、無垢材家具を導入。「木の心地よさを感じられる場」を生み出す様子や、社員の心身や行動、働き方の変化を、J-CASTトレンドが取材・検証を通して伝える。
木の扱いに長けたプロが参画
本プロジェクトの趣旨に賛同し、西川バウムは家具提供および搬入・設置、乃村工藝社がデザインアドバイスとして協力する。
乃村工藝社は、木材を活用した空間づくりの実績が多数ある。「社会課題を解決し、持続可能な社会を実現する『ソーシャルグッド活動』」を推進しており、自社内に、その姿勢があらわれている場所がある。21年3月、東京・お台場の本社ビルに隣接する「台場ガーデンシティビル」にオープンしたコミュニケーションスペース「RESET SPACE_2」だ。仕事や打ち合わせ、交流など用途は限定されない。
随所に木の机やいすを配置。天井にはスギとヒノキの葉で作ったオブジェが吊るされ、窓辺に枝と皮がついた状態の「本物の木の幹」が並ぶ。使用しているのは、100%「フェアウッド」だ。これは伐採地の環境や地域社会を壊さないよう配慮し、持続可能な管理がなされている森林から生産されたものを指す。
全国木材組合連合会と連携し、「非住宅分野の木材利用促進」を目的としたプロジェクト「もりまちドア」にも注力している。デザイナー、プランナー、施主などの空間クリエイター(まち側)が、林業・木材産業事業者(もり側)を訪ねる「産地体験会」を皮切りに、生産背景を知り、相互理解を深めて、「木材を価値高く使うアイデア、手法」を共同創造する取り組みだ。インターネットで「バーチャル産地体験」できるコンテンツも提供している。
「川上(もり側)と川下(まち側)」をつなげる役割を果たすうち、同社は西川バウムと関係を深めた。西川バウム代表の浅見有二氏は、「もりまちドア」における、木材利用に関する相談窓口「もりまちコーディネーター」を務めている。
木の扱いに長けたプロフェッショナルたちは、JR東日本「東京新幹線運輸区」に、どのような憩いの場を生み出すのか。本連載では、家具に使用する木材の生産背景を辿り、デザイン面でのこだわりも取り上げる。
駅や自社ビルへの積極的な国産材活用
JR東日本は、木材活用に意欲的だ。「SDGs(Sustainable Development Goals/持続可能な開発目標)」達成のための取り組みとして、20年3月開業の高輪ゲートウェイ駅建設にあたり、福島県古殿町、宮城県石巻市産の木材を取り入れた。
JR仙台イーストゲートビルや、JR東日本仙台支社ビルのエントランス壁面等には、宮城県産木材を採用。地域資源の活用および、CO2削減を果たしている。
そのほか、「鉄道林(編注:強風や土砂崩れといった災害を防ぎ、輸送の安全・安定性を確保する目的で鉄道施設の周辺に植林される)」の間伐材を利用し、天然由来素材100%のバイオプラスチック製品(タンブラー)を開発した。事業革新パートナーズ(神奈川県川崎市)、JR東日本スタートアップ(東京都港区)との協業によるものだ。
今回は、駅利用者や一般消費者でなく、社員を対象にした木材活用事例になる。運転士や車掌はじめ、新幹線運行に携わるスタッフにとって、「木の心地よさを感じられる場」の有無はどれほどの影響をもたらすのか。家具搬入直後、搬入から1か月後にそれぞれアンケート調査を実施し、心の動きを追いかけていく。
連載第二回は、家具のもととなる「西川材」にフォーカス。西川バウム・浅見代表にインタビューし、国産材活用の重要性や、無垢材の魅力に迫る。