遺恨は末代まで
ウクライナ北部キーウ(キエフ)州ブチャでは、民間人とみられる多数の遺体が発見された。ロシア軍による殺害だ。この事件について、ウクライナのゼレンスキー大統領は「ジェノサイド(特定の民族・人種をターゲットにした集団殺害)」と批判した。ベレンスキー大統領はユダヤ系ウクライナ人。祖父の世代にさかのぼると、親戚の多くがユダヤ人に対するジェノサイド=「ホロコースト」で亡くなったという。
こうした戦時用語の意味合いは、立場によって変わることもある。6月14日のヤフー知恵袋には「ロシア人の占領に対抗するウクライナ人はパルチザンと言われてますよね。でも、ユダヤ人の占領に対抗するアラブ人はテロリストと言われます。これは何故ですか?」という質問が出ていた。
イベリア半島の「レコンキスタ」は8世紀から15世紀まで約800年も続いた。現在、ゼレンスキー大統領は、ロシアによって奪われた東部地区などの「領土回復」を宣言している。いわばロシアと攻守を替えた「レコンキスタ」だ。
戦争で、「パルチザン」「レジスタンス」が登場するようになると、占領した側は抵抗運動に悩まされ、戦いが長期化することが多い。「ジェノサイド」の遺恨は末代まで受け継がれる。
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってすでに4か月以上。今のところ停戦交渉が再開する兆しは見えない。