政府が進めていた「全国旅行支援」の雲行きが怪しくなっている。当初は2022年7月上旬から始めるとされていたが、新型コロナウイルスの感染が東京を中心に全国で急拡大。多くの国民に関係する話にもかかわらず、予定通りやるのか、延期するのかなどの判断が遅れている。最終的な判断は10日の参議院選投票後にもつれ込むという。
首相は語らず
政府は6月17日、「全国旅行支援」を発表していた。全国を対象とした新たな観光需要喚起策だ。現在実施中の「県民割」よりも補助額や適用区域が拡大される。7月上旬のスタートが予定されていた。
ところが、6月下旬から、東京などでオミクロン株の「BA.5」による感染が増え始めた。特に7月に入って全国的にも急増。政府内で慎重論が高まってきた。
木原誠二官房副長官は6日の記者会見で、「全国旅行支援」の実施について、「7月前半中に適切に判断をしていきたい」と述べたが、すでにそのリミットを過ぎている。
時事通信によると、岸田文雄首相は7日の参院選の街頭演説で、これまでほぼ毎回、「近々展開する」などとアピールしていた全国旅行支援について一切触れなかった。神戸市の演説では、観光産業について「復活へ期待が高まるが、最大限の警戒をしっかり維持しながら(支援を)丁寧に進めていく」と語るにとどめた。
コロナ前に匹敵する旅行者数見通しだが
こうした政府側の慎重姿勢にやきもきしているのが旅行・観光業界だ。
日本旅行業協会の髙橋広行会長は(JTB取締役会長)は7日の記者会見で、「実施されれば地域活性化の背中を押す大きな効果につながるが、延期や中止となれば逆の効果が働く」と懸念を表明した。また、「延期になるということになれば、旅行そのものが感染拡大に直結しているのではないかというような印象を与えかねないということで、非常にその部分については遺憾に考える」とも。
JTBは7日、夏休み期間の旅行見通しを発表した。それによると、今夏の国内旅行者数は、コロナ前の2019年にほぼ匹敵する7000万人になる見通しだという。しかしながらコロナの再拡大や、全国旅行支援の中止、もしくは延期によって、大きな打撃を受ける可能性も出てきた。
日経新聞によると、政府は10日の参院選挙後に延期時期などを決めることになるという。また、当座の善後策として、「県民割」への国の補助を、当初の期限だった7月14日宿泊分以降も継続する案なども出ているという。