「道路」を擬人化したプロジェクト「コクドル」が2022年6月22日、スタートした。
少女の形をした「道路の使者」であるコクドルは、全国各エリアの魅力をアピールするアイドルとして活動していくのだという。
地域発展や交通安全へつなげる
コクドルは、地方創生に関するコンサルティングを手掛ける、MOEグループ・ホールディングス(東京都港区)が運営する。現実とは少し異なる世界の「日本」を舞台とし、この世界の主要道は刻道(こくどう)と呼ばれる。各地の刻道を担当するコクドルには、独自の「ルートナンバー」が与えられている。
すでにキャラクターが歌う楽曲を配信しており、プロジェクト参加声優によるウェブラジオも行う予定だ。今後、全国各地とのコラボによる地域産業の発展や交通安全へ向けた取り組みのアピール活動を展開していくという。
第1弾では、「コクドル1号」「3号」「4号」の、3キャラクターが発表されている。「1号」の「橋本一路晴」(はしもといろは)(声:内山悠里菜さん)は、「東京都中央区から大阪府大阪市」をつなぐ「ルートナンバー1」を担当。明言されていないが、現実の「国道1号」をモチーフにしていると思われる。
擬人化ブームに歴史あり
「擬人化」自体は、平安時代~鎌倉時代に成立した絵巻「鳥獣戯画」のように古くからある表現方法だ。
2010年10月3日付の朝日新聞(電子版)によると、近年では従来と違った擬人化がブームとなっている。モデルとなった動物や物の原形を残しての擬人化ではなく、完全に人そのものとして描写するのだ。
例えば、2008年には国を擬人化した「ヘタリア Axis powers(アクシス パワーズ)」というウェブ上で連載された漫画が書籍化され、ヒット作に。上述の朝日新聞記事によると、こうした新たな擬人化ブームの「芽吹き」があったのは2004年ごろ。「炭」を「美少女」化するインターネット上の企画「びんちょうタン」が発端なのだという。
「艦これ」「刀剣乱舞」に「腸内細菌」
2013年には、「軍艦」を美少女として擬人化させたブラウザーゲーム「艦隊これくしょん -艦これ-」がスタートし、話題になった。15年には日本刀を男性キャラクターとして擬人化したブラウザーゲーム「刀剣乱舞-ONLINE-」が登場。そして2021年には競走馬を擬人化したスマートフォン向けゲーム「ウマ娘 プリティーダービー」がサービス開始し、人気を博している。
ゲームだけでなく、コクドルのように複数のメディア展開を念頭においたものも多い。2016年からは、「温泉むすめ」というプロジェクトがアニメや漫画、ゲームで展開されている。日本と台湾各地の温泉を、美少女キャラクターとして擬人化。一部キャラは、有馬温泉のように、モデルとなった地域に公認もされている。
交通関係の擬人化例としては、JR山手線の各駅をモデルにした男性キャラクターを描くアイドルプロジェクト「STATION IDOL LATCH!」がある。2021年5月にスタートした。JR東日本が監修に協力している。
ユニークなのは、腸内細菌を擬人化した「うんこれ」というスマホゲームだ。大腸がん啓発を目的とした団体「日本うんこ学会」が運営している。「ウントピア」という世界を舞台に、プレイヤーは「クリーブス」と呼ばれる生物と戦っていく。そこで、ビフィズス菌や乳酸菌を擬人化したキャラクターが力を貸してくれる設定だ。