チーズケーキ専門店・ソラアオ(京都市右京区)は2022年6月30日まで、「神崎落花生」を使ったチーズケーキを販売している(無くなり次第終了)。
神崎落花生は京都・舞鶴市の神崎地区で栽培されているが、存続の危機に瀕している。J-CASTトレンドは、ソラアオがこの落花生を応援している背景を取材した。
落花生農家いまや2軒
舞鶴市神崎地区は海辺に位置し、神崎落花生は砂地の畑で栽培されている。砂は土に比べて水を蓄えることができず、植物を育てるのは難しい。だが、植物の性質上、肥えていない土地ほど子孫を残すため種子に栄養がいき、おいしくなるのだという。こうして作られた神崎落花生は薄皮まで香ばしく育ち、高級料亭で使われている。
落花生は約9割を輸入に頼り、国内生産は1割程度。神崎落花生はその中の0.003%しか生産されていない。過疎・高齢化が進む神崎地区では、農業の生産量が年々減少し、販売目的で栽培する落花生農家はいまや2軒だけだ。地元・舞鶴の住民からも「京都で落花生が栽培されていることを知らなかった」という声が寄せられた。
ソラアオでは、神崎落花生のおいしさを広く知ってもらいたいと「落花生チーズケーキ」を開発。農家や食材にスポットライトを当てるため、今回あえてクラウドファンディングを実施した。30万円を目標に掲げたところ、500万円を超える支援が寄せられた。注目を集めたことで、神崎落花生のチーズケーキは京都府舞鶴市のふるさと納税に選定され、神崎落花生を栽培したいという農家から手が挙がった。
2か月で走行距離5000キロの食材探し
ソラアオのオーナーパティシエである福本大二氏に、取材した。祖父母が農家だったこともあり、幼少期には祖父母が作ったコメや野菜を食べていた。家を出て、外で買ったコメの味の違いに驚き、農家への尊敬の念を深めた。この体験から、自分の生まれ故郷・京都で、農家の価値を高めるような活動をしたいと常々思っていたという。
福本氏は車で、食材の産地を巡る。その走行距離は、約2か月で5000キロにも及ぶ。京都で栽培されているバナナや栗など、知られざる食材を求めて足を運ぶ。こうした食材が、ソラアオとのコラボを通じてそのおいしさやブランドが認知され、販売価格が上がった事例もある。
現在、農作物の価格はサイズで決まることが多いという。「サイズや重量だけでなく、手間暇かけておいしいものを作れば評価される世の中になってほしい」と福本氏。
「注目を集めることで、継承者問題の一助にもなれば。評価されるべき京都の食材を、これからも探して応援していきたい」
日本各地には、後継者不在で消えゆく食材がまだまだあるのではないか。福本氏はチーズケーキを通して、持続可能な農業を応援していく。
(ライター・永井 玲子)