ガチャの最新事情 辛酸なめ子さんはデートでの活用を勧める

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結語は軽めに

   宝島社のファッション情報誌ステディは、〈仕事も恋も暮らしも...大切なのは私らしさ〉がキャッチコピー。ターゲットは20~30代の働く女性たちだ。

   コラムニストにして漫画家でもある辛酸なめ子さん。この連載にも毎回ユーモラスな挿絵が添えられ、130回目の本作では秋葉原での2シーンが再現されている。

   ガチャガチャだけで一本仕立てるには、それなりの基礎知識(下調べ)や観察眼、分析力が要る。そこは都市伝説やサブカルチャーにも通じたベテランの書き(描き)手だけに、過不足なく上手にまとめている。

   ガチャガチャの隆盛を「物欲のミニチュア化」と喝破する筆者。かといって突き放すでもなく、まん丸のカプセルに刹那の夢を託す客にもぬるい視線を送る。後半の秋葉原ルポは細部まで書き込まれ、面白く読ませてもらった。

   誰もが何度か経験する人生の岐路を「時折訪れるガチャの試練」と書き、「ガチャ運が強い彼女なら、常に最高の選択肢を引き寄せてくれるはず」と飛躍する。ひとつ間違うと読者を置き去りにするが、このあたりの強引さがコラムに勢いをもたらす。

   「物欲のミニチュア化」というパワーワードで無難にまとめる手もあったが、ぜいたくにもこれを序盤で使っているため、終わらせ方が難しい。筆者は秋葉原で目撃した「ガチャ運が強い彼女」の流れをつないで「デート中の一興としていかが?」という提案で締めた。テーマにお似合いの、軽めの結語である。

   数ある雑誌コラムをガチャに例えれば、開ける前からハズレとわかるようなものも少なくない。あれこれ楽しませてくれた本作は、もちろんアタリである。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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