結語は軽めに
宝島社のファッション情報誌ステディは、〈仕事も恋も暮らしも...大切なのは私らしさ〉がキャッチコピー。ターゲットは20~30代の働く女性たちだ。
コラムニストにして漫画家でもある辛酸なめ子さん。この連載にも毎回ユーモラスな挿絵が添えられ、130回目の本作では秋葉原での2シーンが再現されている。
ガチャガチャだけで一本仕立てるには、それなりの基礎知識(下調べ)や観察眼、分析力が要る。そこは都市伝説やサブカルチャーにも通じたベテランの書き(描き)手だけに、過不足なく上手にまとめている。
ガチャガチャの隆盛を「物欲のミニチュア化」と喝破する筆者。かといって突き放すでもなく、まん丸のカプセルに刹那の夢を託す客にもぬるい視線を送る。後半の秋葉原ルポは細部まで書き込まれ、面白く読ませてもらった。
誰もが何度か経験する人生の岐路を「時折訪れるガチャの試練」と書き、「ガチャ運が強い彼女なら、常に最高の選択肢を引き寄せてくれるはず」と飛躍する。ひとつ間違うと読者を置き去りにするが、このあたりの強引さがコラムに勢いをもたらす。
「物欲のミニチュア化」というパワーワードで無難にまとめる手もあったが、ぜいたくにもこれを序盤で使っているため、終わらせ方が難しい。筆者は秋葉原で目撃した「ガチャ運が強い彼女」の流れをつないで「デート中の一興としていかが?」という提案で締めた。テーマにお似合いの、軽めの結語である。
数ある雑誌コラムをガチャに例えれば、開ける前からハズレとわかるようなものも少なくない。あれこれ楽しませてくれた本作は、もちろんアタリである。
冨永 格