名古屋市の玩具問屋「堀商店」の公式ツイッターは、2011年3月に誕生した。当時は、現在ほど有効なモデルケースがなく、一年で運用を断念した。だが18年11月に更新再開すると、ツイートの「バズり(拡散)」やプチ炎上を経験し、ローカルテレビの密着取材を受けるほどのアカウントに成長した。
人気アカウントまねても「成功」できない
《堀商店【公式】@景品・販促品はおまかせ!》縁日用品や、イベントに必要な景品・販促品を、フランクな文体で紹介。アカウント開設後、一度の長い休眠期間を経ているが、22年6月現在まで、同一担当者が運用を担っている。
担当者は、ゼネラルマネージャーの成瀬昭則さん。主業務は、受注、商品提案、仕入れ、OEM(他社ブランドの製品製造)対応だ。
ツイッターを最初に立ち上げた2011年3月、当初の指標は「フォロワー増」だった。だが、「URLを添え、無個性な文章で商品紹介する」投稿ばかり。1年ほど続けたが、労力を割く価値を見出せずにフェードアウトした。
18年の冬、取引先から「現代はやっぱり、SNSやらないと」と背中を押され、運用を再開。約6年ぶりに触れたツイッターは様変わりしており、さまざまな企業が「担当者のプライベートを垣間見せつつ、フレンドリーに情報発信・交流する」コミュニケーションツールにしていた。まずは成功者にならおうと、人気アカウントの運用を1年間まねした結果、「期待したほど成果は出ませんでした」と振り返る。
「元々の知名度や規模、扱う商材などが企業ごとに違うので、『上手くいっているやり方をなぞれば、必ず自社も成功する』わけではないんです」
最適な運用方法を探るべく、改めて自社の強みを分析し、扱う商品の情報や魅力の把握に努めた。さらに「世の中に対し、自社アカウントはどうありたいか」を自身に問い直したところ、
・おもちゃ作りに手いっぱいで、ツイッターを持たず、消費者に情報を届ける余裕がないメーカーの助けになりたい
・ユニークなおもちゃの数々を、広く知ってほしい
・見る人に笑ってもらい、元気になってほしい
こうした思いがあると、気付いた。
「他社の模倣でなく、自社や商品の面白さを咀嚼(そしゃく)し、自分の言葉で語って、ユーザーに喜んでもらうのが私の仕事だと」