「チューナーレステレビ」が続々登場している。チューナーを内蔵せず、地上波が映らないモニターのことだ。「NHKに受信料を払わなくてもいいテレビ」として注目されることもある。
「チューナーレステレビ」の多くは、「Netflix」といったインターネット上の動画コンテンツを閲覧できる基本ソフト「Android TV」を搭載している。2022年だけで、少なくとも3メーカーが「チューナーレステレビ」を発表した。急増の理由に迫る。
「放送法第64条」の対象機器ではない
ドン・キホーテは「チューナーレススマートテレビ」を2021年12月10日に発売。「ITmedia ビジネスオンライン」は22年1月6日付記事でこのテレビについて報道。編集部がNHKに取材したところ、「チューナーレステレビでは、受信料の支払い義務が発生しないことを事実上、認めた」という。
「STAYERホールディングス」(東京都千代田区)は、2022年2月4日に「4K対応 43V型チューナーレス スマートテレビ」を発表。こちらは5月予定の発売を見合わせたが、5月11日には「ユニテク」(東京都練馬区)が「アンドロイドモニターテレビ」をリリースした。
最近だと、「SmartTV,inc.」(発表によると本社は東京都)というスタートアップ企業が6月2日、チューナーレスの「43V型4K SmartTV」を告知した。7月15日に発売予定だ。 Android TVや、スマートフォンの映像を映し出せる「Chromecast」機能を搭載している。
NHKとの契約については、「本SmartTVモニタは、放送法第64条の対象機器ではなく、受信料の支払いの義務はありません」と発表内で説明している。
アナリストの分析は
家電製品の市場調査を行っているBCNのアナリスト・道越一郎氏に取材した。地上波が映らないテレビという構想は以前からも家電業界にはあったという。
そんな中、ドン・キホーテの「チューナーレススマートテレビ」が注目を集めた。22年2月10日付のドンキ運営「パン・パシフィック・インターナショナルホールディングス」の決算説明資料によると、このスマートテレビは同日までに売上1億円を超える人気商品となっている。
ネット専用というジャンルのテレビとして「アリなんだ」と業界で認識されたこと、かつ一定の売れ行きが見込めるとわかったことから、各社が相次いで参入しているのではないかと分析する。
こうした「テレビ」が売れる背景として、NHKの受信料が不要であるというメリットも「多少はある」と道越氏。ただ、それ以上に、近年ではネットコンテンツの数が増えている一方、ユーザーにとって、地上波といった放送波のコンテンツとしての価値は相対的に下がりつつあるという面が大きいのではないかと推測する。
それを表すかのように、BCNがデータで把握している限りでは、地上波を録画する「レコーダー」の売り上げが落ちてきているという。
また現状、ネット動画専用のモニターを「テレビ」として大々的に販売している大手メーカーは見当たらない。そこで、地上波チューナーを備えた通常の「テレビ」市場ではあまり売り上げが振るわなくても、こうした「モニター」の延長にある機器であればある程度「稼げる」と判断した非大手メーカーが参入しているという側面もあるのではないかと話した。