新型コロナウイルスがようやく下火になってきたと思ったら、また新たな感染症がクローズアップされている。「サル痘」だ。肌に多数の発疹ができるなど、天然痘に似た症状が特徴だ。2022年5月21日現在、世界12か国で92人の感染が確認されている。日本国内ではまだ感染者は出ていない。
アフリカで散発的に発生
NHKの報道によると、サル痘は新たに発見された感染症ではない。すでに1958年に見つかっている。当時、ポリオワクチン製造のために世界各国から霊長類が集められた施設にいたカニクイザルで最初に発見されたため、「サル痘」という名前が付けられたという。
国立感染症研究所のウェブサイトによると、70年になって、今のコンゴ民主共和国で、ヒトへの感染が初めて確認された。その後、アフリカ中央部から西部で散発的に感染が発生している。
2003年には、アフリカから輸入された小動物を通じて米国にウイルスが持ち込まれた。この動物が、動物販売業者のところでプレーリードッグと接し、その後ペットとして販売されたプレーリードッグを介して47例のヒト症例が報告された。ただ、亡くなった人はいなかったという。
感染すると、顔や体に特徴的な発疹が出るほか、発熱やのどの痛み、リンパ節が腫れるなどの症状が出る。
WHO(世界保健機関)によると、ヒトでのサル痘の潜伏期間はおおむね6日から13日。このところ、英、米、仏などのほか、ポルトガル、スペイン、イタリア、カナダなどで相次いで感染者が見つかっている。英国で最初に感染した人はアフリカ旅行からの帰国者だったという。そのほかの感染者の関係や感染ルートは不明だ。
パンデミック起こす可能性は
気になるのは、どのようにして感染するのか、新型コロナウイルスのように感染が急拡大するのか、ということ。NHKの取材に対し、この病気に詳しい岡山理科大学の森川茂教授が答えている。
それによると、サル痘ウイルスには大別して2種類ある。強毒型と、それほど強毒でない型だ。強毒型は主にコンゴ民主共和国を中心に分布、ヒトからヒトへも比較的容易に感染するようになってきている。重症例では天然痘と区別のつかないような症状を出して死亡するケースも知られているという。
ただし、森川教授は「新型コロナウイルスのようなパンデミックを起こすようなウイルスではないと思います」と語っている。
というのは、サル痘は主に接触感染。「一部飛まつ感染しますけれども、それほど感染力が強いわけではないので、一気に世界中に広がるものではないと思います」とのことだ。
NHKによると、サル痘には特に治療法はなく対症療法で対応されている。1980年に根絶された天然痘に対するワクチンが、サル痘にも高い予防効果があるという。
今のところ国内の感染例はないが、厚生労働省は今後、感染した人が入国するおそれがあるとして、全国の自治体に注意を呼び掛けるなど警戒を強めている。