日産自動車は2022年5月20日に新型車「日産サクラ」を発表。同日、メタバースプラットフォーム「VRChat」上でもお披露目会を開催した。メタバースでの新型車の発表は、史上初という。
「VR記者カスマル」が、歴史的なメタバース新車発表会を取材、試乗体験を楽しんだ。
まずはVRギャラリーへ
日産サクラは、ガソリンを使わず、100%電気で駆動する軽電気自動車。同社発表資料によると、日本の電気自動車の時代を代表するような車となってほしいという思いから、日本を象徴する花・桜のネーミングが付けられた。2022年夏発売予定だ。
発表会では、日産がVRChat上に展開しているギャラリー「NISSAN CROSSING」に集合した。カーディーラーショップのようなワールド(空間)だ。同社はこのギャラリーをはじめ、地球温暖化の影響について考えるイベント「日産アリアとめぐる環境ツアー」の実施など、メタバース上での情報発信に力を入れてきた。今回の発表会も、その取り組みの一環だという。
会見には、副社長の星野朝子氏がバーチャルで登場。「日産サクラの魅力をVRならではの演出とあわせて体感いただき、楽しんでいただければ」と語った。本人のアバターは、現実世界の星野氏そのもの。アニメキャラクター調のアバターが多いメタバース上では逆に新鮮だ。
光と音のVRダンス
記者は、スタッフに誘導されるまま新型車お披露目会場のワールドへ移動。そこは真っ黒な空間で、中央前方の床に、白い星々で囲まれた楕円形がある。「この中にお進みください」と案内されるが、何が起こるのかこの時点ではわかっていなかった。
実は、発表の演出としてVRダンサーの「よいかみ」さんのダンスが用意されていたのだ。よいかみさんが「よろしくお願いいたします」とお辞儀をすると、姿が暗闇の中に消えた。
次の瞬間、無数の丸い光が空間を浮かび、現れ出たよいかみさんが、ダンスをスタート。EDM調の壮大なBGMが流れる。
よいかみさんが動くと、腕の軌跡を追うように光の粒子が漂う。再びその姿が見えなくなったかと思いきや、光が一点に集中し、その中から再びアバターが出現する。
そして終盤、日産サクラの車体が4台現れた。後方には桜の木をイメージしたかのようなピンクの光が天に向かって伸び、上方で放物線を描いて広がる。最後は花びらが鮮やかに舞い、光と音のパフォーマンスは終了した。
試乗の後はインタビュー
今度は、日産サクラに「試乗」できるワールド「NISSAN SAKURA Driving island」に移動した。1つの島を表現したワールドで、道路沿いに桜が植えられている。エリアごとに満開の花や紅葉が展開されており、一周するうちに春夏秋冬を体感できるつくりで、どこを見ても「映える」島だ。VRChatのカメラ機能で、パシャパシャと写真を撮る。
VR上の日産サクラは自動運転型と、自分で運転できるタイプにわかれており、好きな方を選べる。自分で運転する方は「酔いやすいので注意」と、スタッフから説明があった。
手動運転の場合はハンドルに付いている2つのボールを両手で握り、操作する。右手でVRコントローラーの「トリガー」を引けば前進、左手なら後退だ。
運転席の設定で、シートの高さや前後を調整。これにより、窓からの景色をしっかりと楽しめる。
VR記者カスマルも、運転にトライ。最初は慣れず、カーブで必要以上にハンドルを切りすぎ、いきなり樹木にぶつかる事故を起こす。VRでよかった。感覚をつかむのにはある程度時間がかかるが、美しい景観の中、発表されたばかりの新型車でドライブするのはとにかく楽しい。
「春」のエリアには、日産サクラの充電スタンドを備えたおしゃれなカフェテリアがある。カフェの前で、日産自動車広報渉外部の鵜飼春菜さんに取材した。
新型車の発表だけでなく、こうした試乗体験の場を用意するのもVR上では初めてのことだと鵜飼さん。これまでのメタバース上でのイベントが好評で、さらにVRユーザーに面白いコンテンツを用意したいと考えた中で、今回の実施に至ったとの話だ。
「Driving island」は春夏秋冬や桜の木の移り変わりを表現しているが、日産サクラのカラーも四季を想起させるものを用意した。お披露目会で登場した「ブロッサムピンク」は桜の花を、「ソルベブルー」は夏の空や海を、茶色がかった「暁-アカツキ-」は落ち葉、「ホワイトパール」は雪といった具合で各季節をイメージしたと鵜飼さんは説明した。
今後もユーザーの声を参考にしつつ、同社ではメタバースを活用したコンテンツに力を入れていくとのことだ。