本当を生きる 寿木けいさんが親友に教えられた人生の総仕上げ

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「同志」に近い関係

   寿木さんは、書籍化もされたツイッターの「140字ごはん」など、料理研究家としても知られる。出版社に勤めながらレシピ本などの執筆を続け、25年の東京生活を経て今年2月、夫君の転職に伴い山梨に居を移した。

   本作の最終段落には、初回ということで連載の趣旨を説明したくだりがある。

「この連載では、ぽっと火を灯したような、ひんぴんした粋な人たちのことを書いていく。ふと袖を振りあった縁の中に見つけた姿を、忘れないように」

   最初の「ひんぴんさん」である友人女性は、親族が関わった宿の経営に乗り出したところ。寿木さんと同世代だとすれば40代だろうか。人生半ばにしての大転機である。その動機が自分を取り戻すことだという。

   ブログ等を拝見したところ、寿木さんも移住先と定めた山梨の古民家を改装中で、いずれはそこで民泊の営業、酒食の提供を計画中とお見受けした。となれば、親友の女性は気高い理想像というより、同志に近い存在かもしれない。

   「彼女がそっち側に立ったことに打たれた」という結論部分は、勝手に「こっち側」と読み替えさせてもらった。小さな決算を重ねた先に、お二人の成功あれと願う。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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