クマノミを守り育て、観光事業にもつなげる
カクレクマノミは、一度に500~800匹も生まれるが、無事に成長できる可能性(生存率)は、わずか0.000416%。4回ほど出産し、1匹残るか否かの過酷な世界だ。さらに近年、クマノミは世界的に個体数を減少させているという。「ファインディング・ニモ」の大ヒットを受けての乱獲、海水温の上昇をはじめとした環境変化などが影響している。
「クマノミと瀬良垣島の海を学ぼう!」は、クマノミの「保護と育成」の役割も担っている。同ホテルが21年6月から推進している「瀬良垣島・クマノミ育成プロジェクト」の一環であり、瀬良垣島周辺でクマノミを守り育てながら、持続可能な観光の仕組みを作ることを目指しているのだ。「海の豊かさを守ろう」は、SDGs(Sustainable Development Goals)の目標の一つでもある。
クマノミの育成は、沖縄科学技術大学院大学(OIST)で、海洋気候変動の研究を行うティモシー・ラバシ教授が監修している。記者がシュノーケリングで見たクマノミは、OISTの臨海研究施設内にある水槽で孵化・飼育し、放流された稚魚だ。
「クマノミと瀬良垣島の海を学ぼう!」のレクチャーでは、OIST施設内の水槽でクマノミが生まれ、成長する様子を動画で見ることができる。単に育てるだけでなく、海水温や二酸化炭素濃度といった、各環境の変化にクマノミがどう適応するか、研究も兼ねているのだ。海へ放流後も、クマノミの生息状況を定期的に調査し続けているという。
海洋生物や環境への理解を深めたうえで入る海は、これまでと違って見えた。藤島さんによると、「クマノミと瀬良垣島の海を学ぼう!」には、親子連れの申し込みが多いそうだ。楽しいだけでなく、学びや気付きも得られる思い出作りに、一役買ってくれるだろう。