「砂」の乱獲で地球が壊れる 水に次ぐ天然資源、世界で奪い合い

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   世界的に「砂」が不足している。違法な乱獲や、争奪戦が日常的に繰り広げられ、地盤沈下などで地球環境に甚大な影響を与えている――そんな「砂」を巡る危機的な状況について報じられることが増えている。

  • コンクリートに必要な上質な砂が奪い合いに
    コンクリートに必要な上質な砂が奪い合いに
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メコンデルタが沈下

   ロイターは2022年4月28日、「人類は『砂不足』の危機に直面、国連が警告 人口増加と都市化の進展で」というニュースを公開した。

   「砂」は「水」に次いで人類に利用されている天然資源だ。砂には鉱物が含まれ、ガラスやコンクリート、建築資材などに使用される。その消費量は過去20年で3倍に増えて年間500億トンにもなる。国連は、このままでは河川や海岸線を破壊し、小さな島々を消滅させる可能性さえあると警告。危機回避に向け、砂浜の採掘禁止を含む緊急対策を呼び掛けたという。

   すでに、スリランカでは、砂の採取が原因で川の流れが逆流する事態も起きている。東南アジア最長の川であるメコン川では、川砂の乱獲で、周囲のメコンデルタが沈下している。国連環境計画のパスカル・ペドゥッチ氏によると、陸地が減少し、海面の上昇もあって肥沃な土壌で塩害が進んでいるという。

砂漠の砂はコンクリートに不向き

   同じような記事は3月18日、ニューズウィーク日本版も公開している。「砂の乱採取により、世界中で島が消え、生態系が崩壊し、無慈悲な砂マフィアが登場した。だが、最悪の事態はこれからだ」と警告する。

   爆発的に増え続ける世界の砂需要――その多くは中国から生まれたという。中国の2011~13年のセメント使用量は、米国の20世紀全体の使用量を上回った、と記す。

   環境ジャーナリストで、元東大教授の石弘之さんの『砂戦争――知られざる資源争奪戦』(KADOKAWA、20年刊)によると、シンガポールの国土はこの50年で埋め立てによって25%も増えた。近隣のアジア諸国から大量の砂をかき集めた結果だ。アラブ首長国連邦のドバイは、砂漠の中の超モダン都市として知られるが、要するに、コンクリートでおおわれた未来都市だ。原料の砂はオーストラリアから輸入されたという。

   砂漠の中にあるのになぜ輸入する必要があるのかと思われるかもしれないが、一般に砂漠の砂は、コンクリート素材には適さないのだそうだ。

合法取引は3割

   こうして「上質な砂」が奪い合いとなる。主として「川砂」だ。同書によると、世界の砂取引で合法的に行われているのは150億トン程度。全体の3割前後に過ぎない。約70か国で違法取引が行われ、インド、インドネシア、ナイジェリア、イタリアなど少なくとも12か国では「砂マフィア」と呼ばれる犯罪組織が暗躍している。

   中でも「砂マフィア」が根を張っているのがインドだ。1992年から2020年の間に、インドでは48人のジャーナリストが殺されたが、うち44人が砂紛争がらみだったという。

   砂は、日本でも明治以降、近代化を進める中で大量に利用されてきた。とりわけ関東大震災や戦後の復興では大きな役割を果たしてきた。『砂戦争』によれば、コンクリートの約7割は砂だ。

   1960年代には河川砂の乱獲が問題になった。現在は砂利採取法の規制の下で主に山砂などが採取されている。環境破壊につながることもあり、国内の採取量は年々減少傾向。海外から大量の砂を輸入している。

   超高層ビルやタワマン建設、東日本大震災からの復興、大地震・津波対策の防波堤工事などで砂の需要は尽きない。日本も国際的な「砂戦争」と無縁ではない、とされている。

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