新人の失敗 中島京子さんは「赤福完食」のバイト嬢を思い出す

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やらかす特権

   失敗は新人だけのものではない。私なんか逆に、キャリアを積むにつれて慣れゆえの「やらかし」が多くなった気さえする。ただ、失敗は新人の「特権」である、というのは真実だろう。誰もが小さな失敗を重ね、怒られ、反省しながら育っていく。

   中島さんの姪御さんは幸い希望の職種につけたようだが、就職活動も挫折と失敗と後悔の宝庫である。結婚しかり、子育てしかり、長い老後もそう。すべてが思い通りになる人生などあり得ないし、たまたまそうなったとしても味気ない。

   作家は見聞きしてきた話を並べたうえで「失敗というのは多くの場合、後々は笑い話だ」とまとめている。赤福を自分への心遣いと誤解した新人バイトさんの武勇伝が象徴的である。編集部員らのリアクションまでは詳述していないが、おそらく誰も真顔でとがめなかったのではないか。そういう部類の名物だし、その程度の、気が張らない(だけど美味い)お菓子だからこそ、手土産の代名詞としてあれほど売れているのだと思う。

   新人が手がける仕事も同じである。そもそも、失敗したら組織や会社が傾くような案件はルーキーには任せない。うまくいけばみんなで万歳、うまくいかなくてもご苦労様、次は頑張れよとなるだけだ。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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