中国でオミクロン株の感染が拡大し、春先から大都市が次々とロックダウンしている。トヨタ自動車の合弁工場がある吉林省長春市、アジアのシリコンバレーと呼ばれる広東省深セン市、そして3月末からは人口2500万人の上海市が封鎖され、今なお外出制限が続く。
こうした大都市のロックダウンは市民が多く、経済への影響も大きいため世界で報じられている。だが、ゼロコロナ政策の下、さらに長期間封鎖されている「忘れられた」都市が国境付近に点在していることはあまり知られていない。
市民の半分が流出
ミャンマー国境に接する雲南省瑞麗市。タイ族系ルー族、チンポー族など少数民族が暮らし、平均最高気温が30度を超える。ミャンマー、タイ、インドなどのカルチャーが融合した「ほぼ東南アジア」といっていい小都市だ。
東南アジアとの貿易拠点でもある同地は、新型コロナウイルスの流入リスクも高い。感染者が増加する度に封鎖され、現地メディアやSNSによると2020年から現在まで、ロックダウン回数は9回、封鎖日数はのべ160日以上にのぼる。衛生当局の発表で分かる限り、全市PCR検査は130回以上実施された。
市民の多くは貿易業に従事しており、封鎖は死活問題だ。読売新聞の報道によると、2021年11月には生活支援を求めるデモが発生した(中国でデモが起きるのは非常に珍しい)。
商売ができなくなった人々は他省に移ったり、職業を変えたりした。また、学校の登校停止も長期化し、子どもの教育のために市外に転居する家庭も少なくない。直近の今年4月18日の全市民PCR検査に参加したのは約19万人。昨年4月13日の全市民検査では38万人が受けているというから、1年間で約20万人が瑞麗市を去ったと推定できる。