服で可視化する
まずはパーソナルスタイリストという仕事だが、個人の着こなしについて助言するサービス業、といったところか。2月の連載初回にある著者自身の言葉を借りれば〈個々の生き方や嗜好、ものの見方、考え方のスタイルを洋服で構築・可視化する仕事〉となる。
おしゃれに関するカウンセリングのほか、服買いや美容院への同行、自宅のクローゼット点検、メイクレッスンまで手がけるそうだ。
霜鳥さんは、日本航空の国際線CAからスタイリストとして独立、これまで15年、10歳から88歳まで2万人以上の相談に乗ってきたという。雑誌での連載は初めてだ。
さて母娘の服選び。私には遠い世界だが、書かれている事例が「ありそう」なことは理解できる。母から娘への「呪い」の言葉。娘を思うゆえに傍から見れば頑迷を貫いてしまう母。母親への反発を服の色でしか表現できない娘。いずれも辛いものがある。
霜鳥さんと接点を持つような家庭は、経済的に余裕のある部類であろう。幸せそうな母娘の間にも、他人がうかがい知れない緊張や葛藤がある。そこに割って入り、より良い道に導く仕事は精神科医や心理カウンセラーにも通じている。服飾の世界、なかなか奥深い。
最後に自分と娘の関係に触れるのもフェアで結構。「ところで先生、あなたはどうなんだ」という読者の問いに先回りし、悩める親たちを見事に安心させてくれる。専門家にも、絶対的な正解があるわけじゃないんだと。
冨永 格