プロ野球パ・リーグは、2022年シーズン開幕以降「投高打低」が続く。4月20日の試合終了時点で、打率3割を超える選手は3人(規定打席以上)。セ・リーグでは9人いる。
一方、防御率が1.00を切る先発投手が、パは4人。セはゼロだ。ツイッターやインターネット掲示板上では、反発を抑えた「『飛ばないボール』が採用されているのか」との憶測まで流れている。
好調な先発、長距離砲の離脱
本塁打数を比べよう。パ(計114試合)では20日まで55本。セ(計122試合)では91本が飛び出した。合計得点ではパが346点、セが446点だ。
単純計算で平均すると、パは1試合あたり約0.48本塁打、約3.04得点が発生。セは1試合約0.75本塁打で、約3.66得点だ。試合数にやや差はあるが、打力ではセに軍配があがる。
スポーツライターの小林信也氏に取材した。シーズン開始当初の打者成績は極端な数字が出やすいが、防御率1点未満の投手が多数出現するほど投手側が「上振れ」するのは珍しいという。
背景としてまず「実績あるパの主力投手が順調な調整を積み、いいスタートを切った」と分析する。また、バッテリーによる打者のデータ分析が功を奏している可能性もあるという。
小林氏はこの現象を当初、先発・中継ぎ・抑えといった分業が進み、先発投手らが短いイニングに集中して投げたことが原因ではないかと考えた。
しかし、福岡ソフトバンクホークス・千賀滉大投手(防0.62)やオリックスバファローズ・山本由伸投手(防0.90)は、開幕後いずれも7~8回と長いイニングで登板。千葉ロッテマリーンズ・佐々木朗希投手(防1.16)は、完全試合達成時に9回完投した。長いイニングを投げつつ好成績を残していることから、単純に「先発投手のクオリティーが高い」と評価した。
これに加え強打者が故障したり、調子を崩したりしたことが重なって「投高打低」となっているのではないかと推測。今季は既に福岡ソフトバンクホークス・柳田悠岐外野手や栗原陵矢外野手、埼玉西武ライオンズ・山川穂高内野手といった長距離砲がケガで離脱した。
ストライクゾーンと「飛びづらい球」
そのうえで小林氏は、投高打低の背景となり得る他の要素を挙げた。
まず今季は、パ・リーグ球審のストライクゾーンが低め、あるいは外角などいずれかの方向に広がり、投手に有利になっている可能性があるという。
4月20付の河北新報記事によると、東北楽天ゴールデンイーグルスの元投手で解説者の山村宏樹氏も「(パでは)四球が減っているので、ストライクゾーンがボール半個分ほど広がっているのだろうか」と疑問を示した。
試合時間が若干短くなっている点にも着目した。小林氏によると、今年のパ・リーグは9回までの平均試合時間が19日時点で3時間4分だ。昨年の平均は3時間11分だったという。短い間隔で投球をされると打者は準備ができず打ちづらいため、試合のテンポが速くなったことも一因としてあり得るとした。
そのほか、パでは佐々木投手の完全試合を演出したロッテ・松川虎生捕手や、楽天・安田悠馬捕手のように新人捕手が活躍している。若年キャッチャーの出現による「(昨年からの)配球の傾向の変化が当たっている可能性」があると分析した。
なお1試合の平均本塁打数は、昨年からパが約0.80本から約0.48本に、セ・リーグが約0.89本から約0.75本と変わった。パの変化が顕著だが、実は両リーグで減少傾向なのだ。そのため、ひょっとすると両リーグで多少は飛びづらい球が採用されるようになった可能性は否定できないと小林氏は述べた。