看護師の仕事着 武田砂鉄さんは性差を取り払ったスクラブを支持

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妄想より実用

   武田さんは4月号の初回で、連載の趣旨についてこう記している。

〈新連載では、働く人たちが着ているものを考えていく。(私は)出版社で働いたのちに、ライターに転じたので、もう15年以上、世間一般で言う「だらしない格好」であちこち出かけている...「働く」と「着るもの」にはどんな関係があるのか。自分にはちっとも関係ないからこそ、じっくり考えてみたい〉

   看護師の白衣はかつて、セーラー服などと並び「宴会仮装」の定番だった。あらゆる仕事着のうち、女性看護師と客室乗務員のそれは「男性の妄想を引き起こしやすい」という点でAV界隈でも別格らしい。そういうオヤジ目線に批判的な立場から、武田さんは下衆な願望を打ち砕くスクラブの普及を肯定的に捉えている。

   そういえば初回「会社の受付係」でも、「男性が主導する社会を堅持するものとして、過度に女性らしい『受付嬢』の格好がある」と指摘していた。女性誌の連載らしく、今後もジェンダー平等を意識した読み解きが中心になりそうだ。期待したい。

   受付係の場合、見た目もお客の第一印象を左右するが、看護師は関係ない。分秒の動きに人命がかかる現場もあるから、ユニフォームの機能性や実用性は譲れない要素である。こだわるようだが、客室乗務員も非常時には救護要員。優しい女性も悪くないけれど、(個人的には)たくましい男性も頼りになるから歓迎だ。

   それを身につけるプロフェッショナルの技量を最大限に引き出す、少なくとも邪魔しない...すべての仕事着の大前提だろう。妄想より実用、願望より機能である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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