2022年4月から食料品や光熱費が一段と値上がりした。原油高やウクライナ危機などが影響している。13日には円安で20年ぶりに1ドルが126円台になった。輸入品のさらなる値上がりは必至だ。しかし、政府からは「緊張感を持って状況を注視する」という聞き飽きたコメントが続く。
すべての輸入品に影響
東京外国為替市場で13日、円相場が、一時、約20年ぶりに1ドル=126円台になった。
「鈴木俊一財務相は13日、約20年ぶりの円安ドル高に関し『急な変化は大変に問題である。しっかり緊張感を持って、これからの為替の動向は注視していきたい』と述べた」(ブルームバーグ)
「松野官房長官は13日、『為替市場の動向や日本経済への影響を緊張感を持って注視したい』と述べた」(FNN)
それぞれの記事の見出しも「鈴木財務相、為替の『急な変化は大変な問題』-緊張感持ち注視」(ブルームバーグ)、「20年ぶり円安水準 松野官房長官『経済への影響を緊張感を持って注視』」(FNN)――「緊張感」と「注視」のオンパレードだ。
円安は輸入価格を押し上げる。関係の企業だけでなく、国民の暮らしや生活を直撃する。
朝日新聞によると、ファミリーレストラン大手サイゼリヤの堀埜一成社長は13日の決算会見で、円安をコロナ禍やウクライナ危機に並ぶ逆風に挙げた。イタリア産のハムやオリーブオイルなど国内で使う食材の約3分の2は海外産。「円安は全ての輸入品にきいてくる。最悪の一つだ」。14日の日経新聞は「消費に打撃の恐れ」と警告している。
しかし、担当大臣や官房長官の発言は「緊張感」と「注視する」。お決まりのフレーズの連発で、どんな対策をするのか、はっきりしない。
首相の政治姿勢をチクリ
「緊張感」「注視」は今や、政治家の常套句となっている。セット使用で際立ったのは、安倍晋三元首相だという。中日スポーツによると、ライターの武田砂鉄さんは20年8月6日、自身のツイッターで、安倍氏の「高い緊張感」「注視」発言を以下のようにピックアップしている。
7月9日 『高い緊張感をもって感染状況を注視している』
7月14日『高い緊張感を持って注視している』
7月31日『高い緊張感を持って注視している』
8月6日 『高い緊張感をもって状況を注視』」
この日、広島市の平和記念式典に出席した安倍首相(当時)は1か月半ぶりに記者会見した。しかし、質問は4つに限られ、追加質問を受けつけなかった。
武田さんは、「私たちはもっと、高い緊張感を持って注視する必要があると思う。表に出てこない首相を」とつづり、首相の政治姿勢をチクリとけん制した。
実行が伴わないと単なる言い訳
岸田首相も使っている。2月12日には、緊迫化するウクライナ情勢について「政府としては高い緊張感をもって注視しなければならない」とコメントしている。
首相や大臣が、記者会見や国会答弁で、必ずと言っていいほど使う「緊張感」と「注視」。聞く側は慣れっこになり、緊張感が薄れつつある。
プレジデント・オンラインは4月8日、「『"緊張感をもって注視"するだけで何もしない』そんな岸田政権が高支持率をキープしている"残念な理由"」という見出しの記事を配信している。
ヤフー知恵袋にはすでに20年7月16日、「『高い緊張感を持って注視していく』 この日本語は合ってますか?」と言う質問が出ている。
「間違ってはいませんが、実行が伴わない単なる言い訳に使用するのは誤りです」という回答が出ていた。