「一括1円」などと値引きしてのスマートフォン(スマホ)の販売は、控えた方がいいのではないか。こう「提案」したのは、楽天モバイルだ。総務省ウェブサイトにある、「競争ルールの検証に関するWG(第28回)」(2022年4月11日実施)の資料中に、記載されている。
現状、回線契約の新規契約やMNP(電話番号を維持したまま契約回線会社を乗り換える制度)転入を条件に、最新型の端末が店頭表示価格「1円」で販売される事例が存在する。情報通信業の業界団体・テレコムサービス協会の「MVNO委員会」が今年3月18日に公表した政策提言の中で説明している。こうした状況に、楽天モバイルが問題提起した格好だ。
新規契約すぐ解約のケース
冒頭の「WG」はスマホの大幅値引きや通信市場の動向をめぐり、総務省が通信会社のNTTドコモ、KDDI、ソフトバンク、楽天モバイルにヒアリングを行ったもの。
楽天モバイルの提出資料によれば、ユーザーが新規電話番号で回線契約し、その後すぐに解約するケースでは、他社にMNPで転出しているとの事例が多いのだという。
ただ、この行動の多くは他社へのMNP転出時に得られる「端末値引き」が目的と考えられ、高額端末の過度な値引きによって誘発されている可能性があると同社は続ける。
そこで、「一括1円等の過度な端末値引を各社が控えることで」、このような目的のMNP転出を抑制できるのではというわけだ。値引き抑制をめぐる各社の取り組みが不十分な場合には、新規電話番号契約においてMNPの受け付けを拒否できるよう関連制度の改正も視野に入るとした。
激安スマホ販売に、ドコモは
MNP端末を大きく値引いての販売は、以前から問題視されている。「通信料金と端末代金の完全分離」を打ち出してきた総務省は、「端末の大幅な値引き等により事業者が利用者を誘引するモデル」を事実上根絶していく方針を2019年に示している。端末の値引きにルールを設けないと、通信料金による市場の競争促進と、「端末代金の負担の適正化」が進まないおそれがあるためだ。
19年10月1日に施行された改正版電気通信事業法では、回線と端末のセット販売によるスマホ代の値引き上限が税別2万円までとなった。
今回の「競争ルールの検証に関するWG」資料では、端末の安値販売について、NTTドコモが示した考えも総務省サイトに掲載されている。同社は「一部端末を対象とした大幅な端末割引は、競争環境を鑑み、現行ルールの範囲内で実施している」と説明する。
一方、一部端末の大幅な安売りは、公平性、経済合理性の観点から「不適当」ともコメント。「利用者の利便の確保において、通信と端末それぞれを自由に選択できることが、健全な市場の発展に繋がる」とした。