新型「iPhone SE」の減産を、日本経済新聞(電子版)が報じた。米アップルが2022年3月18日に発売したばかりの、iPhoneシリーズの廉価版モデル。「SE」史上初めて5G(第5代移動通信システム)通信に対応した機種だ。
3月28日付の同紙は、減産理由のひとつに部品不足を挙げた。昨秋発売の「iPhone 13」シリーズや今年予定されている機種の開発、影響は出ないのだろうか。
背景に複数の要因
3月28日の日経記事は、複数の「サプライヤー」の話として減産を報じている。アップルは予測よりも需要が弱いとみて、iPhone SEについて従来計画から20%(200万~300万台分)の生産引き下げを関係者に通達したという。
背景には複数の要因があるとして、同記事は以下の点を挙げている。ウクライナ侵攻による半導体不足の加速、経済制裁によるエネルギーや原材料の供給網の混乱、そしてインフレによる生活コストの上昇が家電製品の需要に影響を及ぼしたことへの懸念だ。
需要の問題だけでなく、部品不足や供給網の混乱が減産の理由にあるのならば、「SE」以外の機種への影響も気になる。
日経の英文メディア「NIKKEI Asia」の同日付記事によると、アップルはサプライヤーに対し「iPhone 13」についても以前の計画よりも数百万台供給を少なくするように求めている。こちらの調整は、部品不足を理由したものではなく、「季節的な需要に基づいている」とのことだ。
iPadの生産に影響出ていた?
半導体の供給量に起因したiPhoneの減産は、以前報じられたことがある。2021年10月13日付の米ブルームバーグ記事では、複数の関係者の話として、半導体不足を理由に「iPhone 13」の21年の生産目標が最大1000万台引き下げる見通しだと書かれている。
この報道後、アップルは手を打ったようだ。「NIKKEI Asia」は21年11月2日付記事で、アップルがタブレット型PC「iPad」の生産を大幅に削減し、iPhone 13の生産へより多くの部品を割り当てたと報じた。複数の情報筋が語ったという。
この減産が響いたのだろうか。2022年第1四半期(21年10~12月期)のアップルの決算発表によると、iPadの売上高は、前年同期の84億3500万ドルから、72億4800万ドルに減った。約14%減だ。iPhoneの売上高は好調で、前年同期の655億9700万ドルから、716億2800万ドルと約9.2%増だった。
また、シンガポールの調査会社「Canalys」の2022年2月23日付(現地時間)発表によると、2021年のiPadの出荷台数は、前年から17%減少している。
今後、ロシア・ウクライナ情勢によって半導体を含め部品不足が加速すると、影響がiPhone SE3やiPadだけでなく、既存モデルのiPhone 13シリーズや、22年秋での発表が見込まれる「iPhone 14」の生産にも波及しないかが気がかりだ。
なお22年3月31日現在、アップル公式サイトの通販ページでは、「iPhone 13」は基本的に在庫があり、品薄の様子はない。