調理に使ったばかりの、アッツアツのフライパン。水をかけると湯気が上がり、「ジュ~~ッ!」という音が。調理器具メーカーの和平フレイズ(新潟県燕市)によると、実は「フライパンの悲鳴」だという。
些細なことでも、誤った知識をもとに器具を扱っていると、本来なら長く使えたはずがすぐに劣化したり、壊れたりする恐れがある。フライパンやホーロー鍋の「意外に知らない」間違った使い方を、同社に取材した。いずれも、何気なくやっているかもしれない。
2万人のうち7割が「知らない」事実
和平フレイズ・ツイッター担当者によると、熱されたふっ素樹脂加工(テフロン)フライパンに水をかけるのは「表面加工が傷む原因のひとつ」。すぐに汚れを落とそうとして、やってしまっている人はいないだろうか。
表面加工が傷む原理は、こうだ。熱で金属は膨張する。火から下ろした熱いフライパンに大量の水をかけると、ぎゅっと収縮し、表面の加工がずれて剥がれやすくなるのだ。加工が剥がれたところからこびり付きやすくなり、劣化のスピードが早まる。急に冷やしてはならない。
ふっ素樹脂加工のフライパンの多くは、本体が熱伝導率の良いアルミニウム製であり、温度が上がるのも下がるのも早い。火から下ろした後、2分ほど待ってから水をかけるとよい。
和平フレイズの担当者は以前、「調理後すぐの、ふっ素樹脂加工(テフロン)フライパンを急に冷やすと表面加工が痛む」ことをツイートしたうえで、内容を知っていたかどうかアンケートを取った。結果、1万9000票が集まり、「知らなかった(72.9%)」が多数となった。
「私も、入社するまでは知りませんでした。取っ手から伝わる振動や、『ジューッ』という音が好きで、ついやってしまっていた反省があります」
他にも「強火で予熱する」「フライパンの中で調理したものを長期間保存」など、ふっ素樹脂加工を傷める要因はさまざま。フライパンの素材、加工によって適切な扱い方が異なるので、注意が必要だ。
ホーロー鍋で炒めるのはご法度
火にかける調理器具でも、物によっては「炒める」用途に使ってはならない場合がある。金属の表面にガラス質を高温で焼き付けて作る「ホーロー(琺瑯)鍋」は、スープや煮込み料理にもってこいだが、食材を炒めると焦げ付きの原因になるという。さらにホーローのひび割れ、はがれにもつながるそうだ。
「食材は別途フライパンで炒めたうえでホーロー鍋に移し、煮込んでください」
一つの器具で「炒め」と「煮込み」ができれば便利だが、そうはいかない。炒めものだけでなく、煎り物、焼き物、揚げ焼き料理には使えないのだ。フライパン同様、担当者がツイッターで「ホーローは、炒め物、煎り物、焼き物、揚げ焼き料理はNGなことを知っていたか」を調査した結果、「知らなかった」が87.4%を占めた(約1500票)。
和平フレイズは、1台で「ゆでる・沸かす・炒める・煮る・揚げる・炊く・和える」の7役をこなす「マルチポット」を販売している。ただ、それをホーロー素材にした「rinto(リント)IH対応ホーローマルチポット」になると、「ゆでる・沸かす・煮る・揚げる・炊く・和える・保存」と、できることが変わる。保存に強みがあるが、炒めるのには使えない。
マルチポットと聞くと、文字通り「マルチ」使用のイメージかもしれない。ただ、名称は「マルチポット」でも、販売元や器具の素材が変われば扱い方も変えなければならない。トラブルを避けるためには「製品の説明書をぜひ読んでほしい」と担当者。思い込みで扱うのは危険だ。