「見栄っ張り」は変わらない
ファーウェイというライバルが消えたアップルは、シャオミやOPPOの勢いをそぐことに力を割けるようになった。2年ぶりとなるiPhone SEのアップグレードは、中国メーカーの牙城であるミドルエンドを侵攻する戦略的端末だとみられてきた。
だからこそ、SE3の価格がSE2より200元高い3499元~(約6万4000円)と発表されると、消費者は落胆した。SE3は3000元を切る価格で勝負に出るとの期待が膨らんでおり、そういったリークも多かったからだ。
今のところ、SE3については機能、価格の両方で「期待外れ」との声が大きい。ただ、iPhone X以降、中国では目新しさに乏しくても価格が安い方が結果的に売れている。SE3は確かに期待ほど安くならなかったが、2021年9月に発表されたiPhone13 mini(発売時定価5199元~)、iPhone 13(同5999元~)に比べると、2000元(約3万7000円)前後抑えられている。
中国の若者は「体験やイノベーションを重視する」「個性を表現したい」と分析されているが、「見栄っ張り」「人気のある物が好き」という国民性も簡単には変わらない。結局のところは、ブランド力のあるアップルにとって、「手ごろな価格+5G」を両立させたSE3は、ミドルエンドの中国勢に対抗するための最適解であり、かなりヒットするのではないだろうか。
浦上早苗
経済ジャーナリスト、法政大学MBA兼任教員。福岡市出身。近著に「新型コロナ VS 中国14億人」(小学館新書)。「中国」は大きすぎて、何をどう切り取っても「一面しか書いてない」と言われますが、そもそも一人で全俯瞰できる代物ではないのは重々承知の上で、中国と接点のある人たちが「ああ、分かる」と共感できるような「一面」「一片」を集めるよう心がけています。
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