ロシア発のセキュリティーソフト会社「カスペルスキー」(Kaspersky Lab)。ウイルス対策ソフトで知られる。ウクライナ侵攻により世界中でロシアへの経済制裁が相次ぐ中、同社製ソフトの利用やサポートに影響はないのか不安視する声がツイッターにある。
同社日本法人(Kaspersky Labs Japan)は22年1月~2月にかけて、ほぼ毎日ツイッターの投稿があった。だが、ウクライナへの侵攻が始まった2月24日から3月10日まで約2週間、更新が止まっていた。
サーバーは世界各地に分散
カスペルスキー日本法人広報に、3月9日に取材した。現在、グループ本社の所在地はロシアかを聞くと、「英国にホールディングス(持株会社)の登記がある、グローバルな民間企業です」と説明。世界各地にホールディングス傘下の現地法人と30以上のオフィスがあり、事業のほぼ8割が「ロシア外」で行われているという。なお「ロシア本社」はモスクワにある。
セキュリティー関連製品の提供体制にウクライナ侵攻による影響はなく、「事業運営は従来と変わらず安定」していると広報。新規購入や製品のサポートは現在も続いており、ソフトの更新も可能という。
また同社のクラウドサーバー(インターネットを介してデータやサービスを提供するコンピューター)は、スイス・ドイツ・中国・カナダなど世界各地に分散しているという。情報の高速処理が可能な上、「何らかの理由でいずれかのサーバーが機能しない場合でも、可用性を保証しています」と話し、こう明言した。
「技術的にも運用面でも、従来と変わらず事業を継続できる体制が整っています」
導入している日本企業は
情報セキュリティーに詳しい立命館大学情報理工学部の上原哲太郎教授に、取材した。ロシア・ウクライナ情勢により、「(カスペルスキー)日本法人の活動が大きな影響を受けることはないはず」と分析する。
ただ、次のような話を耳にしていると上原氏は続ける。カスペルスキーのソフトを導入している企業が、国内外の他のウイルス対策ツール会社に、利用ソフトの乗り換えについて問い合わせる事例が増えている、というのだ。
問い合わせが増えた正確な理由は「不明」と、上原氏。今後ロシア情勢をめぐり何が起こるか分からないことから「リスク回避」のため、あるいはロシアの侵攻に対する「抗議」の意が背景にあるのではないかと推測した。