「閑暇の人」になろう
テレビで拝見する柔和な笑顔と、ストップウオッチを握りしめる「時間の鬼」との落差。正直、それが本作でいちばん印象に残った部分だ。人は見かけによらない。
時間の管理、有効活用は自己啓発本の一大テーマである。齋藤さんは2000年前の哲学者を引用して、みなさんも「閑暇の人」になろうとビジネスパーソンを叱咤激励する。仕事に遊びにメリハリのある、彫りの深い日常を過ごしましょうよと。
普通の人は仕事をしなければいけない。同じ働くにしても、時間の浪費を極力抑え、節約した時間で「閑暇」をひねり出す。ストイックに確保するからこそ、ゆるく使うことも許される...ざっくりそんな論理、というか感覚だろうか。
さて私の半生はといえば、忙殺の人だった。要領はいいほうだが、ニュース相手の生活だからのべつ時間に追われていた印象だ。退職後は自由を持て余しつつ、人生の残り時間を計算するような暮らし。気がつけばツイッターにかまけている。孫からのラインにも「ひらがなしばり」で返さなければいけないし、ああ忙しい。
これはまずいが、ストップウオッチを買うまでの覚悟は固まらない。とりあえずキッチンタイマーでも持ち歩こうか。
冨永 格