中学校理科の「遺伝」分野で、「優性」・「劣性」のフレーズを習ったことはあるだろうか。両親から形質(生物の持つ特徴)を受け継いだときに、子に現れやすい形質を「優性」、現れにくい形質を「劣性」と呼ぶ――「呼んでいた」というのが、正しいか。
近年の教科書では、優性を「顕性(けんせい)」、劣性を「潜性」と言い換えている。
「劣勢=劣っている」の誤解
2017年9月6日付朝日新聞デジタルの記事によると、遺伝に関する研究や知識の普及を目的とする「日本遺伝学会」は同日までに、優性を「顕性」・劣性を「潜性」に言い換えることを決め、教科書の記述も変更するよう文部科学省に要望書を提出する予定としていた。
インターネットニュース「ねとらぼ」21年4月19日付記事で、取材に応じた文科省の説明によると、21年度には中学の全教科書で「顕性・潜性」の用語が使われるようになった。
ただ、必ずしも従来表記が消えたわけではない。教科書を出版している東京書籍公式サイトのQ&Aページによれば、21年度の中学校理科の教科書「新しい科学」では、顕性形質(優性形質)」「潜性形質(劣性形質)」と併記するようになった。
なお「『劣性』=『劣っている』という誤解が生じる懸念が長年」存在したことや、日本遺伝学会の提言を受けての変更という。
中学理科の消化と吸収の単元では、ヒトが食物を消化する過程で「脂肪は、脂肪酸とグリセリンに分解される」といったフレーズがあった。これにも変更が生じている。
新興出版社啓林館サイトによると、文部科学省からの検定意見を受け、2012年度以降の教科書では「脂肪は脂肪酸と『モノグリセリド』に分解される」と表記されるようになった。「モノグリセリド」は脂肪酸の分子とグリセリンの分子が結合した物質。この変更は、近年の研究に合わせたものとのこと。