伝説的な名作を残す
つげさんは1937年、東京都生まれ。極貧家庭で育ち、小学生のころはアイスキャンデー売りなどで家計を支えた。中学には行かず、メッキ工場などを転々。貸本漫画の世界を経て1954年にデビューした。白土三平さんらが64年に創刊した漫画雑誌「ガロ」を舞台に、個性的な作品を立て続けに発表、「今までに読んだことがないタイプの漫画」として注目され、67年には『山椒魚』『李さん一家』『紅い花』など。68年には『オンドル小屋』『ほんやら洞のべんさん』『ねじ式』『ゲンセンカン主人』『もっきり屋の少女』などの伝説的な名作を残した。一時期、水木しげるさんのアシスタントも務めていた。
しかし、70年代以降は次第に寡作になり、『リアリズムの宿』(73年)、『退屈な部屋』(75年)、『無能の人』(85年)、そして、87年の『別離』が最後の作品とされている。
今回、つげさんたちと同時に新会員にえらばれたのは9人。作家の五木寛之さん(89)、指揮者の小澤征爾さん(86)、日本画家の千住博さん(64)、建築家の伊東豊雄さん(80)、狂言師の野村万作さん(90)など、そうそうたる有名人、大家の名前が並ぶ。
朝日新聞の取材につげさんは、以下のコメントを寄せている。
「突然選出を知り、驚きました。選ばれるとは思っていませんでした。日本芸術院に関する知識もなく、自分なんかでよいのだろうかとも思いましたが、選んで頂いたこともあり、ありがたくお受けしました。マンガの分科が新設され、その初代の会員ということも、非常に名誉に感じています。今後の具体的なことについてはまだよくわかりませんが、マンガ界に何かよい影響があればいいなと思います」
つげさんはすでに2017年、第46回日本漫画家協会賞大賞を受賞。20年には欧州最大規模のマンガの祭典とされる第47回アングレーム国際漫画祭で特別栄誉賞を受賞している。