「手打そば ゆづるの里」(宮城県登米市)が、2022年3月27日に閉店する。
店の近くには、フィギュアスケート男子・羽生結弦選手の父方祖父の生家がある。地域活性化を目指して、「ゆづるの里」と名付けたそうだ。店主の及川豊二さん(71)に話を聞いた。
2017年4月から営業
「手打そば ゆづるの里」は、公民館「浅水ふれあいセンター」を管理する浅水コミュニティ運営協議会の運営だ。及川さんは、店主であると同時にセンター長も務めている。
きっかけは、公民館で始めたそば打ち教室だ。参加者たちの腕前が上達したことで、そば打ちの技術を「地域に役立てたい」と及川さんは考えた。地域の有名人を絡めて地域活性化につなげたい思いもあり、受講者に「そば店を始めないか」と持ちかけたそうだ。「地域づくり計画」の一環で、2017年4月に開店した。
「手打そば ゆづるの里」のスタッフは現在、年齢が60歳前半~72歳。本業は農家だ。そのため店は、週に1回・日曜日しか営業できない。
そば店を始めると、遠方からも来客が。スタッフもやりがいを感じ、「(店を)やってよかったね」と話しているそうだ。しかし、新型コロナウイルスの影響による客足の減少とスタッフの高齢化のため、閉店を決断したという。
及川さん自身、寂しさはもちろんある。だが、コロナの影響は甚大だ。賃料は減免になっているが、人件費や材料費はかかる。さらに、週1回の営業だと事前に揃えた材料が余った場合には翌週まで持ち越せないなどの事情が影響した。
地域丸ごと羽生ファン
及川さんによると、地域の住人は「羽生」姓が多く、「羽生選手の故郷だと思っている方も多いです」。店のスタッフはもちろん、地域まるごと「羽生選手ファン」だという。
2014年のソチ冬季五輪前には、地域住民が応援のため「ワンコイン募金」を実施。集まった約100万円を渡すために、羽生選手の父を招待したという。その後、再度お礼に来たそうだ。
店は羽生選手にゆかりのある場所として、ファンが集う。北海道から九州まで、各地から羽生選手ファンがたずねてきたそうだ。
2月20日まで行われていた北京冬季五輪では、隣接する公民館でパブリックビューリングが行われ、テレビ局や新聞社も取材に訪れたそうだ。北京冬季五輪でフィギュアスケート競技終了後の閉店の知らせに、羽生選手ファンからはたくさんの連絡が。「ブラジルに住んでいるファンの人が、当店の閉店を知ったので、店の近くに住むその人の親御さんがいらっしゃったりしましたよ」と及川さんは明かした。