開催後にツケが税金に
札幌市は既存施設の利用などで経費削減の予定だ。しかし、山田さんは、それは簡単ではないと見る。
「東京五輪で明らかになったように、五輪は開催都市の持ち出しとなる。IOCの"五輪貴族"のために、開催国と開催都市は惜しみなくカネを使われ、そのツケは開催後、増税となって返ってくる」
「東京五輪の経費は、当初予算の7340億円の倍以上の1兆6440億円に膨れ上がった。この1兆6440億円でも足りず、実際には3兆円以上かかったと言われている。しかも、開催都市は『カネは出しても口は出せない』ため、IOCの意のままにぼったくられた」
「1998年の長野冬季五輪では、関連経費を含め1兆5000億円以上の費用がつぎ込まれたとされるが、その後、会計簿が破棄されていたことがわかり、いまだにいくらかかったか判明していない。ただ、大幅な赤字だったことは間違いなく、長野市は694億円の市債を返すのに約20年かかった」
さらに山田さんは、1972年の札幌五輪と、2030年の日本との社会状況の違いも指摘する。72年当時は、日本経済は絶好調。札幌ではインフラ整備が進み、五輪の競技施設とともに大通り公園が整備され、地下鉄も開業した。しかし、2030年の札幌は、インフラ整備の予算にも欠くような状況に陥っている可能性がある、とし、以下のように指摘している。
「五輪を開催すれば、札幌はますます貧しくなるだけ。日本の先進国転落を加速化させるだけだ。2030年の札幌は、1972年の札幌とはまったく違うことに、招致を推進する人々はいくらなんでも気づくべきだろう」