社外の人が見てくれていた
1年9か月の休止期間を経て運用再開した背景には、「社外からの反応」があった。
「社長の耳に、営業先や取り引き先からの『何故ツイッターをやめたの?』『投稿を見ていたのに』と惜しむ声が届いたそうです。それで『もう一度やってみてほしい』と言われました」
ツイッターは「全国に向けた情報発信」だ。「全国」には、板橋区も含まれる。同社代表取締役社長が「ツイートが、近場(地元)の顧客にしっかり届いていた」と実感し、眠っていたアカウントに可能性を見出した。
担当者も運用に「未練のような気持ちがあった」。そこで、打診を受けてから2か月後の20年11月、何の前触れもなく「しれっと再開宣言しました」。ツイートに何の反応も寄せられなかったらと不安があり、「におわせ」や、知り合いの他社公式に予め事情を伝えることはしなかったが、ふたを開けてみれば杞憂だった。リプライ70件、いいねは500近くにのぼった。
歓迎されての再出発となったものの、「休止前に仲良くしていたアカウントがなくなっていたり、担当者が変わっていたりして、いわゆる浦島太郎状態でした(笑)」。コロナ禍では気軽に他社の担当者と会いづらく、情報交換や交流がしにくい。「2年弱の間に、企業公式のノリがよりフランクになった」と変化も感じ、初めは戸惑ったが、運用スタイルを無理に変える必要は無いと思い至った。
「休止前に投稿やリプライ、企画を地道にやっていたのが効いて、ありがたいことに運用再開につながりました。それなら、手法は以前と同じで良いはずだろうと」
担当者は、運用目的の一つに「板橋区内の企業公式や、全国の空調設備関係のアカウントとの結びつき強化」を掲げている。例えば、北海道に住むフォロワーから「空調設備の修理」を依頼されてもアタゴ空調設備では対応が難しい。しかし、もし信頼できる空調設備会社が同地にいれば仕事を紹介できる可能性がある。その逆も然りだ。全国へ向けて情報発信し、認知度を上げ、交流を通じて知り合いを増やす意味が出てくる。
「現在も、そこまで多くの受注をツイッター経由で取れているわけではない」と担当者。それでも、「アタゴさんのおかげで板橋区が身近になった」と声を掛けられると励みになるそうだ。地元と深く結びついた運用は、アカウントの個性といえる。「板橋区と言えば、アタゴ空調設備」と印象づけることは、縁と商機を引き寄せる第一歩だ。