「都心でもつながらない」。楽天モバイルユーザーと思われる人たちから、ツイッター上などで相次いでいる報告だ。
楽天モバイルは、「楽天回線エリアの4G人口カバー率」が96%に到達したと、2022年2月4日に発表した。数字だけを見ると、どこでもつながりそうな印象を受けるが......。
「パートナー回線」エリア多い
楽天モバイルが2018年に総務省に認定された計画では、「人口カバー率96%の到達」を2026年3月末に予定していた。約4年前倒しで達成したことになる。
インターネット上では、「ちゃんと使えます」という利用者の報告がある半面、「電波が悪い」「建物の中ではだめ」「エリア内のはずなのに楽天回線につながらない」との指摘も相次いだ。
ケータイジャーナリストの石川温氏に取材し、これらの原因を探った。まず「96%」という数字については、「正しいのではないか」と見解を示した。ただし、説明が続く。
そもそも「人口カバー率」とは。国勢調査に用いられる約500メートル四方において、区画内の50%以上の場所で通信できれば、通信不可エリアがあってもその全域が「利用可能エリア」として計算される。
「地図上で見ても明らかなように、利用者の96%が使えるというわけではない」
というのだ。
楽天モバイル公式サイトの地図上で、サービスエリアを確認した。首都圏や大阪市、名古屋市などの大都市を除いて、楽天回線は接続できないが「パートナー回線」(au)が使えるエリアが多い。「パートナー回線」とは、楽天回線に接続できないがau回線のデータ通信(データローミング)が利用できるというもの。ただし、au回線を5GB以上使用すると速度制限がかかる。
先述した楽天モバイル2月4日付の発表には、「楽天回線エリア内では、お客様はデータ容量の制限なく、高速でデータを使い放題」とあるが、「注釈」が付いている。こうだ。
「高速でデータ使い放題は、楽天基地局に接続時」
「パートナー回線エリア(国内)は月5GBの高速データ容量超過後、最大1Mbpsでデータ使い放題」
楽天が提供する、データ利用量で値段が変わる「Rakuten UN-LIMIT VI」プランは、20GB以上からは料金が固定され、データ速度上限も無制限だ。しかし、このプランには「楽天基地局に接続時」という注意事項がある。au回線、つまり「パートナー回線」のローミング利用する場合は、上限を超えると速度制限がかかる。それだけに「楽天基地局の接続を強化してほしい」と願うユーザーは、少なくないだろう。
大きな鍵は「プラチナバンド」
実は、auのローミングサービスは2020年4月から順次打ち切られている。楽天回線を使えるエリアが増えている半面、この影響か、利用時に「圏外になった」とする報告も多い。
「大手3キャリアでは既に99.99%の人口カバー率です。(96%の楽天と)たった3.99%の差と聞こえますが、やはり『電波の濃さ』が違うのかなと思います」と石川氏。大手キャリアでは、複数の周波数帯を使っていることで電波の濃さが生まれ、つながりやすさにつながっているというわけだ。
楽天モバイルと大手3キャリアとの差はまた、「プラチナバンド」と呼ばれる屋内でも繋がりやすい周波数帯を持っていないことにあると、石川氏は指摘した。
かつて、ソフトバンクもプラチナバンドを持っていなかった時代がある。総務省に割り当てを受けたあとは、一気に繋がりやすくなった話もある。「やはり、プラチナバンドの有無は大きいと思います」。
楽天が約4年前倒しで計画を達成した理由も、そこにあるようだ。「これを受けて次のステップとして、総務省が楽天モバイルに『プラチナバンドをどうやって渡そうか』といった議論になっているところです。今回の前倒しは、次の『つながりやすさ』につなげるための第一歩だと思います」
ただし、プラチナバンドは既に3社に割り当てられ、空きが少ない。大手3社に割り当てられているプラチナバンドを一度返してもらい、再割り当てする必要が生じるという。
「獲得までには、まだまだ苦労することかと思います」。
「引き続きエリアを拡大」
楽天モバイルに取材した。広報は、SNSでの反応などを把握しているという。「お客様からつながりづらいという声は頂戴しております。ご不便おかけして申し訳ございません」と謝罪ののち、こう続けた。
「人口カバー率96%という数字は、まだ通過点になります。引き続き、エリアをしっかり拡大するとともに、回線効率・密度の向上に取り組んでまいります」
屋内・地下の接続は、専門チームを組んで対応していると説明。つながらない場合は、「楽天モバイルご利用者様用電波改善・調査依頼」」に連絡して欲しいとのことだ。