「顔見知り」を多くつくる
ボランティア受け入れで難しいのが、人数調整だ。大型連休となれば大勢駆けつけてくれる半面、継続的に必要な人数を確保し続けられるとは限らない。
2019年10月の台風19号。石巻市では321件が床上浸水した。家が水に浸かると、泥出しはもちろん床や壁の不要物の撤去、清掃、カビ対策と作業は多い。だがメディアの関心は、宮城県内でさらに被害が大きかった丸森町に向いた。結果、
「募集しても人が来ませんでした。東日本大震災の経験から我々は、1日の必要人数を予測できるようになりましたが、台風19号では、その数には全く足りませんでした」
実は、ボランティア作業は「肉体労働」だけではない。時間の経過と共に、いろいろなニーズが生まれる。
「資機材の整理、倉庫に保管されている物資の数の把握。ほかにもお年寄りの話し相手として励ます、幼い子と遊んで、両親が家の片付けをできるようにしてもらうのも、立派なボランティアです。体力に自信がなくても、『やってみよう』と行動を起こしてほしい」
一方で近年、大規模な災害が多発し、また新型コロナウイルスの感染がやまず十分な数のボランティアの確保は難しくなっている。
解決策のヒントになるかもしれない事例を、阿部さんが語った。石巻市の沿岸部の一部地域ではもともと住民同士の結びつきが強く、震災後は互いに苦難を乗り切ろうと助け合っていたという。自らも被災した80代の高齢者が、地域の復旧作業に汗を流した。「自分は助かったから、困った人のために」と、昔ながらの「思いやり精神」を発揮していたのだ。
「災害前から顔見知りを多くつくっておくのが大事だと思います。それが、いざというときに『あの人は大丈夫だろうか』と心配してもらえる。信頼し合える関係を、日ごろからコツコツ積み上げておく」
緊急時はもちろん、「受援力」が大切だ。だが何から何まで「人任せ」にして頼りっぱなしにするのは、どうだろうか。「困ったときはお互い様」となれる人間関係を普段から築いておくのが、何よりの備えになるかもしれない。
(J-CASTトレンド 荻 仁)