鳥取「ブドーパン」の「伯雲軒」が廃業 店主が語る寂しさとパンへの愛

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   鳥取県のローカル菓子パン「ブドーパン」が姿を消す。製造・販売元の「伯雲軒」(鳥取県境港市)が、2022年3月25日で廃業するためだ。

   J-CASTトレンドは、店主に話を聞いた。

  • 伯雲軒公式ホームページから
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京極夏彦氏「全部ください」

   鳥取県境港市は、「ゲゲゲの鬼太郎」の作者・水木しげる氏の出身地。伯雲軒は、水木しげる記念館の近くに店を構えている。歴史は古く、1897(明治30)年に菓子製造業として開業した。太平洋戦争後、配給パンを製造したことを機に製パン業に転換している。

   伯雲軒のウェブサイトでは「水木しげる先生の故郷でもあり、好物のブドーパンを60年以上作っているのが当社なのです」と紹介している。ミステリー小説家・京極夏彦氏は、大沢在昌氏、宮部みゆき氏共同公式サイト「大極宮公式HP」2015年2月24日付のブログで、同店を訪れたことを紹介。「工場にあるパンを全部ください、という大人買い」と記している。

   J-CASTトレンドの取材に答えてくれたのは、2022年で66歳を迎える伯雲軒の店主。今回廃業を決めたのは「後継者がいないことと、このタイミングが良いと思い決めました」と明かした。

   店主は、製造工程全てに関わっている。朝は早いときは4時から、夜も19時、20時まで仕事が続くときがある。年齢や体力的な問題から「健康なうちに」廃業を考えていたそうだ。加えて、新型コロナウイルスの流行。いつまでも収束しない中、自分もいつか感染するかもしれない、「ここかなと考えました」と話した。

親から受け継いだ「ブドーパン」

   60年以上愛され続けている「ブドーパン」は、もともと先代が戦後に作り始めたもの。取材に答えた現店主自身の給食にも出たことがあるそうだ。いつできたかは知らないが、「終戦後モノが売れなくなった時期に試行錯誤して作った、と親からは聞いております」。

「その当時珍しかったんだと思いますが、自家製のラム酒入りバタークリームに、シナモン、ぶどうが入ったパンです。当時にしてみれば栄養が豊富なもの。栄養士から注目もされ、幼稚園等でおやつ提供などを行っていました。それで地域のソウルフードになったという経緯があります」

   廃業に伴い、ブドーパンは終売となる。今後は手に入らない。店主は「寂しさは、あります。もったいないことはもったいないですよね」。誰かに継承したい気持ちはあるが、レシピや言葉だけでは伝わらない部分も多い。愛情を持って日々パンに接してきたことや、顧客の期待を裏切りたくないという気持ちで葛藤し続けたと思いを語った。

「愛情を持って、真面目に、責任感を持って作ってくれる人がいたら、もしかしたら、残るかもしれないです」
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