「運」への期待 浅田次郎さんは「人生からそれを排除せよ」と

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ドライな視点

   1916年(大正5年)創刊の婦人公論は、これまでの月2回刊を改め、今号から月刊誌として再スタートした。雑誌の体裁は大判となり、50ページほど増量、浅田さん以外の執筆陣や取材相手も豪華で、版元(中央公論新社)の気合が伝わってくる。

   リニューアルを飾る「幸運」特集のコンセプトは、〈身近にある小さな芽を見逃さなければ、あなたの人生を豊かにする運はきっと引き寄せられるはず。日々を前向きに生きる人たちの言葉や、笑顔で過ごすヒントをたっぷりお届けします〉というものだ。

   掲載号には柔らかな対談や自己啓発的な文章が並び、運気に関するコーナーもあれば、スピリチャルな筆者や風水師も登場する。中で、浅田さんのドライな視点は異彩を放つ。なにしろ「運の概念を人生から排除せよ」と喝を入れる内容なのだから。

   特集の要となる一文を浅田さんに頼んだのは、〈運命に翻弄される人々をドラマチックに描く作風や、カジノなど運が左右する物事に明るい〉からとのこと。結果的には、特集全体のバランスを取るうえで効果的なページとなった。

   リアリストの冨永が顧みても、人生はちょっとした運や巡り合わせに左右される。強運を呼び込み、悪運を避けるのに努力や精進がどれほど効いているかは数値化できないが、「結果は人間的要素の累積」と言われれば、がんばろうという気にはなる。

   最後に僭越ながら、浅田さんのメッセージというか、言わんとするところを末広がりの八字にまとめておこう。それは〈運のせいにするな〉である。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。
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