「その場に並ぶのも嫌だった」
日本陸連が設定した過酷な記者会見は、名古屋ウィメンズマラソンの4日後だった。代表に決まった3人に加え、松田選手も出席した。明るく抱負を語る3人と、4日前にほぼ確実と思われていた代表の座から転げ落ちたばかりの松田選手――。
NHKの金沢隆大記者はNHKのウェブサイトで当時の状況を以下のように記している。
「松田はMGCで4位だったので『補欠』として出席した。座った席は一山の隣。終盤までは淡々と受け答えをしていた。しかし、女子マラソンの元オリンピック代表でスポーツジャーナリストの増田明美さんから質問を受けた時、我慢が限界を超えた」
「--切ない気持ちになるが目標は?」
「松田選手 正直なところまだ気持ちの整理がついていないので...」
涙で言葉が詰まった。「再スタートを切れるぐらい気持ちを戻して、体を整えてからまたチャレンジしたい」と声を振り絞るのがやっとだった。金沢記者は、「残酷なほどに、勝者と敗者が色濃く分かれる形となった会見」と報告している。後日、金沢記者は松田選手から、「その場に並ぶのも嫌だったし会見には正直、行きたくなかった」と、当時の気持ちを聞いている。