咳は十尺先まで飛ぶ
マスクの効用については100年前に流行したスペイン風邪の対策でも強調されている。対応に当たった内務省衛生局が当時作成した詳細な報告書『流行性感冒――「スペイン風邪」大流行の記録 』(平凡社)では、マスクや咳について以下のようなことが報告されている。
・粗製並製の「ガーゼ」のマスクは防御効果なし。
・談話の際に菌は四尺先まで飛んでいる。患者周囲の危険界は四尺。
・咳嗽(咳、くしゃみ)では十尺先まで飛ぶ。咳嗽患者周囲の危険界は最短十尺。
当時すでにガーゼへの吹き付け実験結果などをもとに、使用するマスクについては、素材ごとの一平方インチ当たりの繊維数についても細かく定められている。
厚生労働省は、こうした先人の知見にさらなる検証を加えて今回のコロナウイルス対応のマスクについて、ウェブサイトで以下のように記している。
「マスクの素材ですが、一般的なマスクでは、不織布マスクが最も高い効果を持ちます。次に布マスク、その次にウレタンマスクの順に効果があります。もちろん、人の顔の形は千差万別ですので、同じ素材のマスクの間でも、自分の顔にぴったりとフィットしているマスクを選ぶことが重要です。また、マスクのフィルターの性能や布の厚さなどによっても差が出ます」