「シューティングゲームとしては異様」なシナリオ
「メーカーやユーザーの信頼を裏切るようなものは作れない」
濱田社長に背を押された神谷さんが真っ先に感じたのは、「今までにないプレッシャー」だった。ムーンクレスタとテラクレスタの名を汚してはならない、「クレスタ」シリーズを愛するファンを落胆させる作品にはできないと覚悟を決め、制作に取りかかった。
「過去に手掛けてきたゲームと同じ熱量でシナリオを書き上げたところ、ゲーム中、キャラクターがほぼしゃべり続けるボリュームになりました(笑)。シューティングゲームとしては異様だと思います。話自体はシンプルで、燃える内容なんですけどね」
ストーリーは、自身の原体験を生かして考案した。特に、アクションシューティングゲーム「重装機兵ヴァルケン(メサイヤ/1992年)」、3Dシューティングゲーム「スターフォックス64(任天堂/1997年)」をバイブルとしたそうだ。両作品には「襲い来る敵を撃ち、ハイスコアを目指す楽しさだけでなく、仲間との出会いや別れ、ライバルとの熱い戦いなど、重厚な物語があった」。先人たちが手がけた数々の素晴らしい作品が心の中にずっとあり、ゲーム作りのヒントとしてたびたび役立てているそう。
神谷さんが書き下ろした、太陽奪回を目指す「絶体絶命の状況からの逆転劇」を味わうにはソフトに加え、追加コンテンツ「ソルクレスタ ドラマティックDLC」の購入が必要になる。
ドラマティックモードの紹介動画(BitSummit THE 8th BIT生配信で公開された)を見ると参號機にはパイロットと一緒に、ある動物が乗っている。
J子「『ハム子』という名前の、ハムスターですね」
神谷さん「はい、そうです」
J子「ハムスターと言えば、これまでのお話に何度も出てきた企業名なのですが、もしかして神谷さん...『そういうこと』なんですか?」
神谷さん「そう、です、ねぇ...」
意味ありげにほほえむ神谷さん。ふと、真剣な表情になり「ソルクレスタはやっぱり、濱田さんが理解を示し、応援してくれないことには走らなかったプロジェクトです。本当に、心から感謝しています」。続けて、
「だからこその『ハム子』かもわからないですけどね」
とはにかんだ。
ハムスター・濱田社長にも取材した。しかし、なんと、「ノーコメントです」。「僕みたいないちプロデューサーが、神谷さんが手がける作品にコメントを寄せるなどおこがましい」そうだ。そのうえで一言、こう述べた。
「僕はただ、神谷さんが作りたいように作ってくださることをワクワクしながらお待ちしています」
信頼がゆえの「ノーコメント」。企業の枠を超え、深く結びついた二人の関係が見て取れた。