プロに任せても「二人三脚」で運用を
フォルクローレでアカウント運用請負に従事するのは、全員が元「中の人」。炎上を一度も起こさず、多くのファンを獲得した実績を持つスペシャリスト集団だ。その中から、依頼企業との相性をみて、中村さんが担当を決めている。
「コミュニケーションや、エンゲージメント(ツイッターへの反応数)重視の運用」という全体方針や、依頼企業のイメージに合った「トーン&マナー」で投稿する、とのルールはある。「あとは各担当者に一任し、運用方針をまとめた企画書を作ってもらっています」。
中村さんによると、「ツイッター運用は、縛りすぎると上手くいかない」。例えば「1日5ツイート投稿する」と定めると、企業の設立記念日や商材がメディアに取り上げられて盛り上がっていても、「今日はもう5ツイートしたので、これ以上投稿できない」となり、せっかくのPRチャンスを逃してしまう。
請負担当者は、依頼者と毎日チャットで連絡を密に取り、ツイートに必要な情報や画像データをリクエストしたり、要望をヒアリングしたりする。フォロワー増が急務だと相談されれば、プレゼントキャンペーン企画を用意する。
「アカウントを炎上させたら、傷つくのは表に出ている企業名。絶対に避けねばならない」と中村さん。そのためにも、双方の担当者間で伝達ミスや誤解がないよう信頼関係を築きつつ、相手から常に新鮮な情報を受け取るよう担当者に指示している。企業が掲げる目標や優先事項が変わることもあるためだ。
中村さんがやりとりに口を挟むことは、ほぼない。どのようなチャットをしているか、中村さんと、フォルクローレ事務員・天渡早苗さんのチームで常に確認している。
「天渡さんは面白い提案や企画を素早く見つけては、担当者を褒めるのが上手ですね」
一方で、フォローやサポートを手厚くしても、トラブルはゼロにできない。こんなことがあった。
「ユーザーから寄せられた声に、依頼企業の社員が強い表現で反論してしまったのです」
普段は、依頼主に代わってフォルクローレの担当者がツイートしている。そのトーンとは異なる攻撃的な投稿だったため、「フォロワーからすれば、人格が一変したように感じられたのでは」というのだ。関係者で何度も話し合い、「投稿を控え、対応を任せてください」と伝えたが、理解してもらえなかった。
アカウントには日々、さまざまなリプライが寄せられる。いわれのない誹謗中傷も少なくない。必要に応じて毅然と受け流す「スルースキル」も求められる。
こうしたプロの運用術を見て吸収できるのが、「アカウント運用請負」を依頼する魅力の一つだろう。中村さんは「アカウントは誰にでも開設できますが、ファンを作り、本業へ還元できるまでに成長させるのは並大抵ではなく、多くの壁がある」と話す。その壁を、社内だけでなく社外のプロと一緒に乗り越えるのも手だ。
中村さんは2022年1月27日、オンライントークイベント「みかんの汁の飛ばし方」を開催する。本人のツイッター運用の考え方に触れられそうだ。これは著書「中の人は駐在さん ツイッター警部が明かすプロモーション術」の出版記念。カメラの前で、警視庁アカウント担当者当時の話をするのは初めての試みだという。