「VR(仮想現実)」を基本の「キ」から押さえつつ、「VRを楽しむ達人」を目指す連載。ナビゲート役は、「メタバース」でのマーケティングや調査を手掛ける「往来」代表取締役の東智美(VR上でのアバター名:ぴちきょ)さんだ。
VRヘッドセット「Oculus Quest2(オキュラスクエスト、以下Quest2)」を手に入れたものの、コンテンツが多すぎて何を楽しめばよいかわからない...。前回はぴちきょさんに誘われ、VR向けSNSアプリ「VRChat」に存在する「授乳カフェ」で、いやしの時間を過ごした記者。今回は「イベンター」の力を借り、団体旅行へ出かけることにした。
「移動、観光、温泉」を楽しめるワールドツアー
ぴちきょさん「VRChatには個性豊かなワールドがたくさんあります。VR上でのイベント企画・運営が得意な人に、旅行プランを作ってもらいませんか」
この提案と同時に、VR旅行代理店サークル・YAL(ゆるふわエアライン)の、ひととせハルさんを紹介してもらった。「VRCTrip」という、(1)汽車に乗って目的地へ向かい、(2)観光地で気ままに観光し、(3)最後は温泉旅館でまったりする、ワールドツアー型イベントを定期的に手がけている。
コロナ禍の今、「たくさんの人とワイワイ盛り上がりながら、観光しがいのある場所を巡りたい」。ひととせハルさんにこうリクエストすると、数日後VRCTripのポスターとチケットがツイッターのDMに送られてきた。「参加者の気分を高める工夫をここまでしてくれる人は、一握り。ひととせハルさんは『体験』をプレゼントしてくれるイベンターなんです」とぴちきょさん。チケットがなくても参加できるが、手元にあるだけでワクワク感が段違いだ。
イベント当日。VRChatで、ひととせハルさんと予め「フレンド」になっておき、「ジョイン」する。一瞬で、青天の下で咲き誇るひまわり畑が広がった(ワールド名「夏の訪れ-The arrival of summer-」)。ここが、旅の出発地点。景色に目を奪われていると、ぴちきょさん(カメラマンとして記者に同行)とひととせハルさん、そしてもう一人男性のアバターが近付いてきた。今回サブコンダクターを務める、勇希夏矢さんだ。
次々と参加者が現れ、みるみるうちに30人近くになった。周囲で「はじめまして」とやりとりが繰り広げられ、人混みにいるような錯覚に陥る。目前の相手と会話するのにも、大声を出さなければならないほど。
ひととせハルさん「それでは皆さん、移動しまーす!まずは汽車に乗りますよ」
メインコンダクターが号令をかけ、次のワールドにつながる「ポータル」(複数人で同一のワールドに入るための仕組み)を開く。飛び込む時にはもう、「仕事」で来ていることを忘れかけていた。