「東京都では来週には、1万8000人以上の感染者数になる」「全国では10万人を超える可能性もある」――オミクロン株による新型コロナウイルスの感染拡大に伴い、専門家による感染者数の予想が大幅に跳ね上がっている。
1月上旬段階では、2月に2万5000人などと予想されていたが、すでに感染者数が想定を超えてしまい、上方修正を余儀なくされている。
社会活動停止の可能性も
テレビ朝日の「グッド!モーニング」は2022年1月21日、最新状況を報じた。20日、全国で確認された感染者は、過去最多の4万6199人。28の都道府県で、過去最多を更新し、東京都の感染者は、初めて8000人を超えた。21日は9699人と、1万人目前だ。全国の重症者もじわじわ増えている。
都のモニタリング会議は20日、感染状況の警戒レベルを昨年9月以来となる「最も深刻なレベル」に引き上げた。国立国際医療研究センターの大曲貴夫医師は、「この水準が継続しますと 1週間後の1月27日の推計値は、4.01倍の一日あたり約1万8266人と、危機的な感染状況となります」「社会活動の停止を余儀なくされる可能性があります」との見通しを語った。
昨年夏にデルタ株が流行した時は、2万5990人が全国で最多の感染者数だった。FNNプライムオンラインは20日、欧州でのデルタ株とオミクロン株の感染状況を比較。今後日本でもピーク時の感染者数は、10~36万人になることが考えられるとし、東京歯科大学・寺嶋毅教授の「10万人は超える可能性が高い」という見方を紹介している。
テレビ朝日の21日夕方のニュースでは、日本医科大学の北村義浩特任教授が。2週間後と想定されているピーク時には全国で15万人の感染者になる可能性があるとコメントしていた。
これで軽症なの?
感染者数が爆発的に増加する一方で、相変わらず「オミクロン株は風邪並み」という風評も根強い。症状に個人差はあるものの、テレビなどではこのところ「軽症ではない」「風邪並みではない」というケースが数多く報じられている。
広島ホームテレビは、軽症と診断され、自宅療養していた20代男性に取材している。それによると、発症から3日間は38度~39度の間での発熱、咳や鼻水の症状があった。その後、熱はなくなったが、咳がひどくなり鼻水が続いた。この間、食事はほぼとれずプリンやヨーグルトなど口にできるものをなんとか食べるという状態。10日ほどたってようやく鼻水が出なくなり咳も落ち着いてきたという。
「(自分は)若いので風邪ぐらいかなと思ってたんですけど、咳もかなり続いて正直想像以上にしんどかったです。正直軽症って言われたけどこれで軽症なのかなとは思いましたね」と、この男性は語っている。
日本テレビも感染した都内の30代女性に取材している。頭痛とおう吐がひどかったという。「(オミクロン株は)風邪症状とよく言われていたので、それくらいで済むと思っていたので、『これは風邪じゃないでしょ』ってもう、言いたいですね。本当に、甘く見ない方がいいなと、身をもって思いました」
オミクロンで「終息」するのか
オミクロン株の大流行を最後に、コロナ禍も終息するのではないかという観測も一部で根強い。中には、軽症のオミクロンに感染すれば、今後の新株の出現に対して免疫ができるのではないかと考えている人もいるようだ。こうした見方に対し、英国在住の免疫学者・医師の小野昌弘さんは、「Yahoo!ニュース個人」に掲載された「オミクロンが『自然のワクチン』にならない理由」で詳しく解説している。
それによると、「デルタでできる免疫からオミクロンは逃避するので、デルタ感染したことがある人にも簡単に感染できてしまいます。この逆もまた理論的には考えられます。オミクロンに感染することで人体がつくる抗体は、デルタなどほかの変異株には効きが悪いという可能性が十分にあります。実験による検討が必要ですが(現在なされていると思われますが)注意すべき可能性です」。
つまり、デルタ株に感染した人がオミクロン株に感染しているように、オミクロン株に感染した人が別の変異株に感染する可能性はある、ということだ。
小野さんは、「(新たに)オミクロンともデルタとも異なるタイプの免疫学的特性をもつ変異株が問題になる可能性もまた十分にあります」と、改めて新型コロナウイルスのしたたかささに注意を喚起している。