2022年4月から、成人年齢が20歳から18歳に引き下げられる。これに伴いどのようなことが変わるのか、リーガルメディア「弁護士ナビシリーズ」を運営するアシロ(東京都新宿区)が、法律事務所エムグレンの武藏元(むさしはじめ)弁護士に聞き、22年1月5日に内容を公表した。
成年になると、親の同意がなくとも自分で携帯電話の契約をしたり、ローンを組んだり、クレジットカードを作れるようになったりする。ただ契約の知識や経験が少ないため、消費者トラブルに遭いやすいと想定されるという。
20歳の誕生日の翌日に、悪徳業者が
成年の定義が見直されても、「現在20歳から認められている全てのことが、18歳から認められるようになる」わけではない。例えば、以下のような違いがある。
■18歳になったらできること
・親の同意なしでも契約ができる
・10年有効のパスポート取得
・公認会計士・司法書士、医師免許、薬剤師免許などの国家資格を取る
・結婚
・性同一性障害の人が性別の取り扱いの変更審判を受けられる
■20歳からできること
・飲酒
・喫煙
・競馬・競輪・オートレース・競艇の投票券の購入
・養子を迎える
・大型・中型自動車運転免許の取得
・裁判員制度の裁判員
武藏弁護士は、「早い時期から自立した大人として社会経済活動に参加できる一方、若年者の社会的経験の乏しさに付け込んだ契約をめぐるトラブルが増える」と予想している。特に、一般的に「高校3年生で18歳を迎える」点に注意が必要で、校内で被害が連鎖して広がるリスクがある。
国民生活センターなどによるトラブルの報告件数を例に取り、「18歳~22歳までの年齢の契約当事者は多くはないものの、20歳を超えると相談数が急増する」と武藏弁護士。さらに、悪徳業者が20歳の誕生日の翌日を狙って取引を持ち掛ける事例も多く見られるとしている。
暗号資産関係のトラブルも
若年層に多く見られるトラブルの具体的な内容とは。武藏弁護士が挙げるのは、インターネット通販、マルチ商法、情報商材、学生ローン・クレジットカード契約だ。最近は暗号資産関係のトラブルも多いという。
「現行法においては、特定商取引法によるクーリングオフ、消費者契約法により契約の無効・取消しなどにより、契約をした者の保護を図ることは可能ですが、現状の制度では不十分でしょう」
そのため、むやみに契約を行わないことが一番の対策と考えられる。加えて、「取引の類型や若年者の特性に応じて事業者に重い説明義務を課したり、若年者の社会的経験の乏しさによる判断能力の不足に乗じて取引が行われた場合には、契約を取り消すことができるなどの法改正が待たれる」。