街に溶け込む自動運転バス
――高齢化が進む日本では、ご指摘のように特に地方で今後、移動のうえで交通手段の確保が課題になりますね。
木暮:茨城県境町では、自動運転バスを活用したまちづくりに取り組んでいます。路線バスも町内の一部しか運行しておらず、移動が不便でした。そこで全国で初めて自動運転バス3台を導入し、5年間の運行を町で決めたのです。2020年11月26日、町内で定時運行が始まりました。
私も昨年(2021年)、試乗してきました。時速20キロ未満で境町中心部を走ります。非常にスムーズでした。交通量が多くないので渋滞の恐れがなく、街に溶け込んでいるよう感じました。町民も好意的で、バス停の場所を提供したり、車がスピードを抑えて走ったりしているそうです。高齢者の移動手段という目的だったのが、子どもや、幼い子を連れたお母さんも乗っていました。
地方では過疎化が進むと、運転士不足を起因に乗車率の低いバス路線が廃止されたりして町の衰退に拍車がかかります。運転士がいない自動運転バスが運行できれば、地域の持続的な発展につながるのではないかと期待しています。
――先述したSDGsの「住み続けられるまちづくりを」には、具体的なターゲットのひとつとして、2030年までに、全ての人が安価で安全に、持続可能な交通手段を使えるよう定めています。自動運転が大きなカギとなりそうですね。
木暮:移動と同じく大切なのが、物流です。先にお話しした伊那市では、ドローンを使って高齢者に荷物を配送する事業を開始しています。
ドローンは法律上、市街地に飛ばせません。ただ市は、市内を流れる天竜川沿いに発展してきました。川の上なら飛行可能です。注文は、市民が多く契約するケーブルテレビから、リモコンを使って行います。高齢者にとっては、慣れないスマホを操作せずに済みます。午前11時までに注文すれば、ドローンが川の上空を飛んで公民館まで品を運び、そこからは人手を使って各家庭に配送されます。