大型台風被害で「電信柱」と化したヤシの木
――問題の2つ目「温暖化」は、周期的な問題だと指摘する声もあります。
本田:地球の歴史を見ると、暖かくなったり、寒くなったりと周期的な気候変動を繰り返してきたことが分かります。だとしても、世界全体の気温上昇ペースが、昨今は異様に早い。国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)によると2100年には、2000年頃から見て平均気温が最大4.8度上昇するとの予測があります。一部の温暖な地域でなく、世界全体の話ですからね。20年6月には北極圏(ロシア・シベリア)で38度が観測され、大きな話題になりました。
――温暖化で海水温が上昇すると、どんな影響が出ますか。
本田:「北極の海氷が溶けている」というニュースを見かける人が多いのではないでしょうか。氷は表面が白いので日光を反射しやすいのですが、溶けて黒い海面になると太陽の熱を吸収して海水温が上がりやすくなる。温暖化の進行がさらに早まるのです。すると起こる現象の一つが、台風の発達です(編注:気象庁気象研究所によると、海面水温が高いほど大気中に含まれる水蒸気の量は多くなり、より多くの水蒸気が上空へ運ばれるため、台風の勢力はより強くなると考えられる)。
最近で言えば2021年12月19日、フィリピンにスーパー台風(台風22号)が上陸し、300人以上が亡くなっています。
――台風ではなく、「スーパー台風」ですか。
本田:従来の台風とはケタ違いの威力なので、壊滅的な被害をもたらします。
フィリピンといえば、数年前にミンダナオ島を訪れた際に、自然の恐ろしさを痛感する景色を見ました。大型台風(2012年12月発生)に見舞われた後だったので、村はめちゃくちゃになっていました。辺りに生えているヤシの木から葉っぱが全てなくなっており、電信柱かと思ったくらいです。
現地の人から「台風が来たのは初めて」と聞きました。備えを何もせずいたので、被害もおのずと大きくなってしまったのです。これまでなら進路を取らなかった場所にまで、台風が来るようになっているのかと驚きました。