犬猫に学ぶ 帯津良一さんは「執着と不安を排し 今を生きろ」と

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最終ミッション

   帯津先生、85歳にして犬猫を見習いたいという。その謙虚さこそ見習いたい。

   猫や犬に学ぶべきなのは、〈過去や未来に対し執着や不安を持たず、今を生きること。いつでも死ねる覚悟で今日を生きること〉である。雑念を排し、今だけを精いっぱい生きる...動物が当たり前にできることが、悲しいかな人には難しい。過去への後悔、未来への心配。そんなことにとらわれ過ぎると、大切な「今」が疎かになる。

   その点、猫のマイペース、犬の一生懸命は、どちらも今を生きている証拠。いやはや逆立ちしてもかなわない、というのが筆者の感慨と思われる。

   ライターとしての帯津さんにとって、2021年の最終ミッションは〈掲載誌の猫特集に付き合い、ベテラン医師の切り口で一本書く、それも「ナイス・エイジング」を指南する連載にふさわしい一本を〉だったわけだ。ペットを飼っている筆者であれば、愛猫や愛犬に触れざるを得ず、もっとべったりした作品になっただろう。

   ここではペットを飼っていないことが幸いし、客観的な視点を生かしたドライテイストに仕上がった。なにせ最後は人間まで突き放している。かといって冷たさはない。

   済んだことをいつまでも引きずらず、先の話であれこれ悩まず、今を存分に楽しもうというメッセージ。老齢の読者には刺さったに違いない。

冨永 格

冨永格(とみなが・ただし)
コラムニスト。1956年、静岡生まれ。朝日新聞で経済部デスク、ブリュッセル支局長、パリ支局長などを歴任、2007年から6年間「天声人語」を担当した。欧州駐在の特別編集委員を経て退職。朝日カルチャーセンター「文章教室」の監修講師を務める。趣味は料理と街歩き、スポーツカーの運転。6速MTのやんちゃロータス乗り。

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