簡素でも快適に
モノがないから「あったらいいな」の夢が膨らむ...ご本人は半ば照れながら「...なんて言うと『好きなモノに囲まれて暮らしましょう』と、雑誌に本に散々書き散らしてきた自分の立場はなくなるわけだが」と、正直に自らツッコミを入れている。
ひと回り下の私も、買い物への気構えは現在の吉本さんに近い。家電などの耐久消費財は型は古くても大抵そろっているし、食器などの雑貨も、見て回るのは好きだが新規の購入はめったにない。家具もしかり。美術品には興味があるが、もはや飾るべきスペースが尽きた。時計や靴を含め、おしゃれ関係にはハナから関心が薄い。それぞれの分野に感心の濃淡はあっても、高齢者はだいたいそんなものだろう。
では、掲載誌の「口コミ大賞」に選ばれたモノは何か。「総合」の上位3品は...
(1)ヘアードライヤー ナノケアEH-NA0G(パナソニック)
(2)コードレスクリーナー Micro1.5kg(ダイソン)
(3)量る手間を省いたプッシュ式洗濯用洗剤 アタックZERO(花王)
実用品、それも生活必需品のヒット商品ばかりである。ちなみに「ヘルスケア部門」では、「買うべき運命」というにはいささか小粒ではあるが、冨永も愛飲しているプロビオヨーグルト R1(明治)が選ばれている。
とはいえ最新型のドライヤーや掃除機は、吉田さんも書く通り、長い付き合いだった愛用品を処分して「えいや」と購入したに違いない。簡素でもより快適に...モノであふれた成熟社会に生きるシニア層の、そんな生活スタイルが浮かんでくる。
冨永 格