「ぼったくり男爵」の異名をとった国際オリンピック委員会(IOC)のトーマス・バッハ会長の名前が、このところ内外のメディアで報じられる機会が増えている。北京冬季五輪や札幌の冬季五輪招致に関連するニュースだ。IOCは崇高な五輪理念を掲げているが、実態は、「カネまみれ」ともいわれている。その代表格がバッハ会長と見られているため、発言が額面通りに受け取られないことが多い。
「政治的中立」で五輪開催
国際的には、2022年2月開催の北京冬季五輪が焦点になっている。米国が、中国の人権問題を巡って五輪に政府関係者を派遣しない「外交ボイコット」を表明したことによる。
朝日新聞によると、バッハ会長は12月8日、IOC理事会後の記者会見で大会運営には影響しないとの考えを示した。「我々は選手が参加できないのではと案じていた。各政府が選手は参加できると強調し、確約してくれたことを歓迎する」と話した。
英国なども追随する姿勢を表明していることを質されると、「五輪の威厳は、スポーツ大会としての威厳。主役であるアスリートに我々は集中していく」と「政治的中立」の姿勢を強調した。
また、中国共産党の元高官から性被害を受けたと告発した中国出身のプロテニス選手、彭帥さんの安否が懸念されている問題について、バッハ会長は、これまでに2度、本人とオンラインで会話した時の状況を振り返り「彼女が抑圧されているようには見えなかった。それが我々全員が抱いた印象だ」と話した。
FNNによると、彭帥選手が、非常に不安定な状況にあるはずだとも述べ、彼女の身に起きたことについて、中国側と協議しているとも答えたという。
また税金を使わせるのか
日本と関係の深い事案でも、名前が登場している。2030年開催に札幌が名乗りを上げている冬季五輪問題だ。STV(札幌テレビ放送)は13日、「『バッハ会長は札幌に高い関心』 橋本聖子組織委会長単独インタビュー 待ったなし札幌五輪誘致」というニュースを報じた。
同テレビが、東京オリンピック・パラリンピック大会組織委員会の橋本聖子会長に単独インタビューしたもので、橋本会長は、「バッハ会長の目は札幌に向いている」と述べ、高い評価を得ているという認識を示した。「札幌の計画は既存の施設を使う観点で、東京とは全く違う。札幌には実質的にすべてがそろっている。出発点が違う」というのがバッハ会長の認識だという。
2030年に立候補しているのは、ソルトレークシティー、バルセロナ、ウクライナなど。26年冬五輪がイタリア、28年夏は五輪がロサンゼルスなので、順番的に欧米からアジアの札幌に回って来る可能性がある。ただし、五輪には多額の金がかかる。
インターネットでは「まず東京五輪の収支報告が必要」「エセ貴族どもに、札幌市民、日本国民の税金を使わせ続けるのか?」など手厳しい声も出ている。
「ぼったくり男爵」流行語大賞の上位に
五輪は近年、アマチュアアスリートの祭典からコマーシャリズム容認に変質。テレビ局や広告代理店、大手スポンサーのカネに牛耳られている。バッハ会長自身は貴族ではないが、カネまみれのIOCの代表者として「ぼったくり男爵」とされた。
今夏の東京五輪は、コロナ禍が広がる中で、多大な犠牲を払って開催された。かなりの問題点があっても五輪は開催するというのがIOCの基本姿勢と受け止められた。北京五輪についてもIOCは同じスタンスのようだ。
東京五輪の余波は、日本でまだ続いている。「ぼったくり男爵」が「現代用語の基礎知識選 2021ユーキャン新語・流行語大賞」のトップ10に入ったのだ。その理由は以下のように説明されている。
「2021年5月、第4波が到来、東京オリンピック・パラリンピック開幕まであと2カ月半となるこの時期、国民の不安は高まっていた。
〝コロナに打ち勝っていないのになぜ開催するのか〟の疑問に対し『国民の命と健康を守っていく』の一点張りでスルーし、政治家の先生方はひたすら国際オリンピック委員会(IOC)のご機嫌を損ねぬよう立ち居振る舞ってみせた。トーマス・バッハ会長らは日本の感染状況に配慮をみせることなく開催に突き進み、日本が主権さえ手放したように見えるこの状況をアメリカのワシントンポスト電子版は『IOCは商業主義で日本を踏み台にしている』と指摘した。この記事で使われた『Baron Von Ripper-off』にあてられた和訳が『ぼったくり男爵』。一度聞いたらそうとしか見えないピッタリさで瞬く間に拡がった。
選手には観光を禁止する一方で帰国前には銀ブラに出かけ、ぼったくり男爵像にさらなる磨きをかけた。元祖オリンピック男爵クーベルタンがこれをみたらなんというのだろうか」